ポリーとはらぺこオオカミ

ポリーとはらぺこオオカミ

2021年7月24日

「ポリーとはらぺこオオカミ」 キャサリン・ストー

たぶん、割と定番の本なんだと思います。低学年から、中学年向きの。でも、私は知りませんでした。

先日、ご自宅を開放して文庫活動をされている方とお話しする機会があったときに、教えていただいた本です。読み聞かせに、10分以内で読めて、しかも続きは自分で読んでみたい!と思えるような本って、少ないんですよね、と話していたら、これなんかどう?と薦めて下さいました。確かに、短時間で読めて、しかも、続きがあって、かなり、理想的。

いつもおなかをすかせていて、ちょっとおバカなオオカミと、お利口なポリーの、食べちゃうか食べられないかのたたかい・・つーか、やり取りです。

それにしても、オオカミって、いつも悪者にされて、やっつけられて、それで減っちゃったんだよな、とは我が家の夕食時の会話。

確かに、、赤ずきんちゃんでも、七匹の子ヤギでも、三匹の子豚でも、オオカミは悪者です。この本は、そんな昔話がベースにあって、物語に忠実に行動しようとするオオカミと、それを賢くすり抜けるポリーのお話です。

一人で読むのなら、小4くらいまでは、行けちゃいますね。と言うより、むしろ、今の子どもたちは、このお話しのベースになる物語のほうを、どれだけ正確に知っているのかしら、とそっちのほうが気になったりします。

・・と、パルティオの日記で書いたら、

実際にオオカミの怖さを知っている時代なら胸のすくお話だったかもしれないけど、今読むと、間抜けなオオカミが、一方的に苛められているようにも読めて、なんだか苦手

と言うコメントをいただきました。
ああ、わかるわかる。こういう別の視点をもらえるから、パルティオは楽しい。
確かに、気のいいオオカミが、お馬鹿なことをやっては、賢いポリーにやっつけられる、その繰り返しです。オオカミは、実際には何も悪い事を成し遂げていません。だのに、こんなにいたぶられて。

これを楽しいと感じるか、なんだか嫌な気持ち、と感じるかは、読み手次第かもしれませんね。子どもが、無条件に「わるもの」とされる相手をやっつけるお話を読んで、爽快な気持ちになったり、自分に自信と勇気を感じたりってのは、なかなか良いものです。でも、その一方で、相手の気持ちにまで心を配れる賢さを持つ子は、こんなことをしていいの?って思うかもしれません。ちょっとした、紙一重のところがあるというか。

子ども時代、家族で時代劇を見ていて、姉がよく「これ、どっちが悪者?」と父に尋ねていました。「そんなに単純なもんじゃないのに。」と、幼心に思ったことを、覚えています。人間は、善人と悪人に、そう簡単に分けられるものじゃないのに。と、思いながらも、悪者がやっつけられると、そこはそれ、やっぱり爽快感があったりはしたものですが。でも、釈然としない感覚も、残ったものではあります。

ところで、ベースとなるお話ですが。その、家庭文庫をやっていらっしゃる方にお聞きしたんですが、「三匹の子豚」ってどんな話?って子どもたちに聞いたら、一人ずつ、ぜんぜん違うストーリーだったそうです。

わらの家、木の家、レンガの家、ってのは同じだけど、お兄さんが、食べられちゃったのか、逃げてきたのかが違うし、最後に、子豚がオオカミを食べちゃうのから、オオカミがぐらぐら沸き立つお湯に落ちて死んじゃうのから、残念、と言って逃げちゃうのから、あろうことか、仔豚達にごめんね、と言って仲直り(!)するものまで、あったそうです。

何が正しいかは、資料があまりに混在していてわかりませんが、もともとの民話では、オオカミは食べられてしまったのではなかったかな?
子ども達には、ディズニーのストーリーの影響が大きくて、いろいろな昔話も、ディズニーバージョンのほうが、むしろマジョリティになっているそうですが、なんだかそれもなあ・・・なんて、思ってしまいました。

2009/3/3