マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデ

2021年7月24日

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「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊 新潮社

ひいろさんから「他の物語」の存在を教えてもらったのが、これ。「ジーン・ワルツ」の裏側を描いた物語。

飛行機の中で読んだ。「どうだった?」と夫に問われて「なんか嘘くさい」と答えたら、「この人の作品は全部そうじゃない。」だって。そういえばそうかも。それにしても、この作品は、リアリティに難があるような気がする。

自分の母親に代理出産を頼むとしたら、こんな言い方はしない。頼まれた方も、こんな風には返さない。と、どうしても思ってしまう。閉経した女性が代理出産を頼まれた時、自分の体の中に起きるかもしれない様々な事柄を想像しないわけがない。「なぜ、そんなことをせねばならない?」と考える前に、出産を一度でも経験した者なら、まずはともかく「無理!」と思うだろう。登場人物をことさらに論理的で、人間として感情にかけた性格に描いているのは、その不自然さを補うためなのか、もともとそういう設定にするつもりだったのか。いずれにせよ、自然な感情の流れというものが感じられなくて、台本を読んでいるみたいな気がしてしまう。

作品内には料理が何度も登場するのだが、それにも違和感が。朝食に大根の味噌汁にご飯にしば漬け。これだけじゃ足りなくない?焼き甘鮭にしじみの味噌汁に白菜浅漬、ごはん。寂しすぎない?と思うのは、私だけだろうか。

娘婿からの手紙にも、食事の報告があるが、朝はボイルドエッグにフレンチトースト、昼はコーンフレークとミルク、夜はパスタでペンネアラビアータって・・・炭水化物に偏り過ぎだし、バランス悪すぎだし。

って、別に料理の本じゃないんだけどね。そういうところから、リアリティは欠けてくる、ような気がする私。

描きたい題材があって、伝えたいメッセージがあって、それのために人物を配置して、都合のいい台詞を語らせたら出来上がったのかな、と思う。ドラマ化されているらしいけれど、そっちの方はもっと人間味があったんだろうか。

2015/4/2