ロスト・シング

ロスト・シング

22 ショーン・タン 河出書房新社

数か月ぶりのショーン・タンである。翻訳は岸本佐知子。安定と信頼のコンビだ。

ある夏の日、海辺で迷子を見つけた僕が、そいつを連れて帰ったけれど、どこに置いてやればいいのかわからなくて、翌日、居場所を探してさまよって、そして、どうやらここならいいぞという場所に奴は帰っていった、というお話。それだけなのだけれど、その「迷子」というのがとても様子が普通ではない、変な奴で、そして、その世界もとても不思議で。絵の片隅で、あちこちで、不思議な現象が起き、不思議な形があふれていて、とても楽しい。そして、少し寂しい。

ショーン・タンはいつの不思議な絵本を作る。大人が何度も見返したいような絵本だ。迷子の帰る場所。転勤族の娘で、転勤族と結婚した私は数年おきにあちこちをうろついて、ついに帰る場所がない。帰属する土地がない。そんな私にぴったりくるような、不思議な絵本だった。