三人寄れば、物語のことを

三人寄れば、物語のことを

2021年7月24日

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「三人寄れば、物語のことを」上橋菜穂子 荻原規子 佐藤多佳子 青土社

 

積ん読撃破キャンペーン絶賛敢行中である。長いこと書棚の上に積んであった本があまりに高い山となってしまったので、当分読めそうにないものや読むのを諦めたものは書棚に収め、読む気持ちがあるものは後回しにせずに読むことにした。しばらく図書館で借りるのはおあずけである。おかげでかなり山が低くなりつつある。この本も出版されてすぐに買ったはずなのに、ずっと置きっぱなしだった。夫はとっくに読んだらしい。ようやく手に取ったら、あっという間に読んでしまった。
 
上橋菜穂子、荻原規子、佐藤多佳子。いずれも児童文学出身ながら、大人にも愛される物語を書く作家である。この三人はどうやらとても仲良しらしい。普段は日常的な世間話や雑談ばかりしているそうだが、改めて、それぞれの書いた作品について作家として、読者として語り合ったのがこの本である。
 
最初の鼎談は、なんと2011年3月12日に予定されていたのが中止となり、同年4月に改めて行われた。なので、初っ端は、あのときどうしていたか、から話は始まる。上橋菜穂子がすぐに、これは大災害になるから覚悟した方がいい、ということを二人に伝えたおかげで二人は早めに買い出しに走り、物資に困らずに済んだというエピソードは興味深い。すべてのものは個別ではなくつながっている、という上橋氏の世界観が二人を助けたとも言える。
 
三人はそれぞれにそれぞれの物語の読者でありファンである。と同時に作家であり、執筆中に会話を交わす仲でもあるので、書く側からの視点、見守る立場からの視点、読み手としての視点、様々な立場が交錯して、話が深まり、実に興味深い。でありながら、それぞれが節度を保ち、踏み入ってはならないところには踏み入らない、それゆえにとんでもない深淵には行き着かない安心感と残念感も共存している。
 
作家同士がこれだけ仲良しというのは珍しいことだという。それは、それぞれが自分の内部に確固たるものを持ち、惑わされない核と自信があるからこそできることなのだと思う。なかなかに美しい友情を見た本でもあった。

2016/10/12