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「京都土塀案内」 写真 塚本由晴 案内 森田一弥 学芸出版社
関西に住んで、京都を時々歩くようになった。京都の歩き方はいろいろあるが、建築オタクの夫と一緒に歩くと、今まで気が付かなかった京都の面白さを教えられる。この本も、夫が借りたもの。京都の土塀を写真付きで案内してくれる。
ぱらぱらとめくっていると、あ、この塀、たしかにどこかで見た、と思う写真がある。土塀にも、いろいろな形があり、色があり、作り方がある。様々な色の土のサンプル写真を見ていると、実にカラフルで楽しい。
以前、タモリ倶楽部で漆喰を塗る企画を観たことがある。職人技とはこういうものかと感心したものだった。
古い建物の、古い土塀も、それを作り、塗った人がかならずいるから、それがここにあるのだなあ、と当たり前のことを思う。
土塀は、湿度に弱いから、小さな可愛らしい屋根で守られている。強いはずの塀が、弱さを見せている。土は、年月によって変化し、色と形を変えて行く。この土塀は、かつての土塀とは、また違ったものになっている。
そういう、たくさんの当たり前に、この本は気づかせてくれる。そして、もう一度、土塀を見たいと思わせてくれる。
次に京都を歩くときは、土塀も見よう。
そう思う本だった。
2012/9/18