人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束

人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束

18 中村哲 澤地久枝(聞き手) 岩波書店

昨年末、『荒野に希望の灯をともす』というドキュメンタリー映画を見た。アフガニスタンで医療、用水路建設に力を尽くし、武装勢力に銃撃されて死去した中村哲医師の足跡を追ったドキュメンタリーである。その後「天、共に在り」という本も読んだ。中村哲氏には、ただただ頭が下がるばかりである。このような人がいた、というだけで厳粛な気持ちになる。

「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」は、中村医師の本を作り、それが売れることで若干なりとも彼の活動の助けになることを願って、澤地久枝氏が企画した本である。名を売るとかお金になるということのために何かをするのをひどく嫌う彼女が、中村氏のために何ができるだろうかと考えた末の一冊である。だが、その結果行われた対談において、中村氏は自分自身についてはひどく寡黙で、ただただアフガンの実情について静かに語ったのであった。抑制的であればあるほど、彼の深い思いや強い願いがひたひたと心に迫ってくる。これほどに誰かのために尽くし、それを自分の喜びとする人がいただろうか。

その後、中村哲氏は銃弾に倒れた。澤地久枝氏は九十歳を超えられた。「中村哲さんをしのぶ会」で澤地氏は、初めて中村氏の妻、中村尚子さんに会った。わが身や家族の話は厳しく制限されていた中村氏である。尚子さんはみごとなひとであり、良き伴侶である、と澤地氏は語っている。

この本が少しでも売れて、活動の助けになりますように、と私も願う。中村哲医師は、偉大な人であった。