人新世の「資本論」

人新世の「資本論」

2021年7月24日

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「人新世の「資本論」」斎藤幸平 集英社新書

ガッツリと一週間かけて読んだ。で、どこまで理解したかと問われると自信がない。これは、一年かけてゼミで交代にレポートを書きながら取り組んだほうがいい本じゃないかと思う。ああ、大学に戻ってみたい・・・。

簡単に言っちゃうと(言っちゃいけないんだけど)マルクスは資本論を書いたあと、ずっと自然科学に興味を持って勉強していて、じつはエコロジカルな思想を打ち立てていて、ただ、それを発表するのに間に合わなかった、というのね。その思想こそが、現代の諸問題を解決する大きな手がかりになる、というのがこの本の主張。

事例はとてもわかり易いし、論理が整理されていて、著者はものすごく頭のいい人だろうなあと思う。ああ、だけど、やっぱり難しい。

先進諸国がグローバルサウスに犠牲を外部化して問題に気づかないふりをする、というところからスタートする。「大量廃棄社会」でも取り上げられたバングラデシュの「ラナプラザ」倒壊事件が事例に上がっているのにははっとさせられた。ここで説かれているのは、私達に密接に関係することなのである、と気が付かされた。先進国の快適な生活が地球を危機的状況へと導いていく。それはもう、みんな知っていることだよね。でも、きっと技術革新が起きて、問題は解決されていくかもよ、などという甘い見通しをこの本はバサリと切り落とす。論理的に、的確に。そして、私達を救うのは脱成長コミュニズムしかない、という結論にたどり着く。

だんだんついていけなくなるんだな、これが。ただ、はっとする文言があちこちに散りばめられている。広告とかパッケージとかを美しくひと目をひくように作り出す仕事が高収入を得て、子供や老人のお世話をするようなエッセンシャルワーカーが最低賃金で働いている、それが正しいのか、と私も思う。商品そのものの価値は変わらないのに、それをキャッチーに見せることで高い価値があるかのように見せ、売る仕事にどれだけのほんとうの意味があるのか。命を守り育てる仕事がどれだけ大切で価値があるのか。そういうことに、私は、子供を育てながら長い時間かけて気がついてきたのではなかったのか、と読む手を止めて、ふっと考え込んだりする。示唆に富んだ本である。

内容をきちんと理解するためには、もう一度読み直さねばならないなあ。いつできるかなあ。

2021/2/9