佐野洋子とっておき作品集

佐野洋子とっておき作品集

2021年4月4日

8 佐野洋子 筑摩書房

佐野洋子没後10年。もうそんなに経ったのか。佐野さん、素敵だった。病気を知ったとき、物凄くショックを受けて、佐野さん死んじゃったらどうしよう、と思ったことを覚えている。でも、佐野さんは死ぬ気満々で、元気に死んでいった。かっこよかった。そうか、そうやって生き抜くのもいいもんだ、と思った。また一つ、年を取るのが怖くなくなった、いい先輩を知っているっていいもんだ、と思った。

「文章を書くことはいつも本業でないと思っているのか、自分で自発的に書きたいと思うことがなかった。頼まれるとなんでも書き散らしていた。それが印刷物になった時も、放ったらかしにしていたので、どこにあるのかないのかわからなくなったが、気にしないようにした、気にすると、家中を探し回らなければならないと思うとめんどくさかった。(「覚えていない」佐野洋子あとがきより)

というわけで、あちこちに散らばっちゃった佐野さんの原稿が未だに「発見」されるのである。この本は、そんな作品を集めた一冊。特にテーマもなく集まっているのでバラバラ。でも、だから佐野さんっぽいといえば佐野さんっぽい。中で引き合いに出された谷川俊太郎さんも、苦笑はするだろうけれど、怒りはしないんだろうな、と思う。谷川さんご自身がご自分宛ての手紙を提供されているくらいだしね。

ああ、佐野さんの文章がまた読みたい。あの世で佐野さんの新作が読めるのなら、それも悪くないよね、怖がらずに歳を取っていこう(笑)。