偉い人ほどすぐ逃げる

偉い人ほどすぐ逃げる

2022年2月2日

16 武田砂鉄 文芸春秋

武田砂鉄を前にも読んだよなあ、と思って検索したら、2020年の三月に読んでました。数字だけ見るとついこの間のことなのだけれど、遠い。東京転勤が決まったのに、コロナのせいで延期になった、なんて書いてあったけれど、その後の紆余曲折の果て、ついに東京にはたどり着かなかった。それでよかったんだけどさ。

「文學界」連載のコラムをまとめたもの。2016年10月から2020年2月まで。これが読むと遠いんだなあ。2016年の話なんて大昔に思える。小池都知事の「満員電車をゼロにします」宣言やら小泉進次郎の下手なポエムみたいな発言だの、菅官房長官(!)がパンケーキが好きだの、なんてのどかな…とすら思う。その後の東京オリンピックはやるのかやめるのか、みたいな話や伊藤詩織さんを揶揄する人々への怒りなどはまだ記憶している部分だし、読み返しても腹立たしいのだが。

もうね、偉い人を批判すると「いつまで言ってんの」状態になって、ぴゅーっと逃げていく偉い人を、批判の舞台の上に置いておくことすらできないのが現状なんだな。次々に批判すべきことが出てきてしまうので、何の解決もしていないことが、次々に「まだ言ってんの」になる、この恐ろしさ。そんな中で、とにもかくにも「きちんとした文章」で論理的に批判しようという姿勢が見えるのが、この本である。

武田砂鉄は鋭いし賢いと思う。逃げないで、まともに論理で戦えよ、と「偉い人」に言いたい。かっこ悪いよ、逃げ回ってるのって。