68 「優日雅 夏目雅子ふたたび」
森英介・著 小達スエ(編集協力) 実業之日本社
以前日記にも紹介した渥美清の俳句を集めた「風天」の作者による夏目雅子の俳句の本。夫が図書館で借りてきた。こんなきれいな人の本を夢中で読まれると、ちょっとカチンとくるが、限りなく美しい人である。
夏目雅子は、実は、歳時記にも掲載されるほど優れた句を読む人であった。俳人の金子兜太は、「こんなに奔放で、情熱的な俳句をつくる人には、私はこれまで出会ったことがない。」と言っている。俳号は、海童。
夏目雅子を句会に送り込んだのは、伊集院静であるという。私は、実は、伊集院静氏にも、一卵性双生母子といわれた母親の小達スエ氏にも、なんとなく釈然としない感情をいだいているのだが、しかし、彼の雅子へ与えた影響は強大で重要なものだったのだろうとは思う。
(釈然としない感情とは、この二人に、共依存的な、あるいは支配的な匂いを感じてしまうからなのだが、それは、まさに私の個人的なものでしかない。)
結婚は夢の続きやひな祭り
時雨てよ足元が歪むほどに
湯文字乱れし冷奴の白
通り雨そっと握った蝉の抜け殻
風鈴よ自分で揺れて踊ってみたまえ
「風天」にも書いたが、俳句というのは、こんな少ない文字数で、その人の心象風景を、こんなにくっきりと表すものかと改めて思う。
夏目雅子は、きっぱりと美しく、まっすぐな人だった。
(引用は「優日雅 夏目雅子ふたたび」より)
69「夏目雅子 27年分の笑顔 夏目雅子25th記念アルバム」朝日新聞出版
ついでに、こんな本も借りてきてあって、しかしまあ、ほんとうに美しく表情豊かな生き生きした人であったことだなあ、と感じいってしまう。
「生きてたら、この人だって、もう五十過ぎのおばちゃんになってるのよ」
と言ったら、夫に
「何、対抗しようとしてるの」
と呆れられてしまった。
きれいなおばちゃんになっただろうに。
美しいものは、はかないのだなあ。
2011/7/5