名文を書かない文章講座

名文を書かない文章講座

2021年7月24日

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「名文を書かない文章講座」 村田喜代子 葦書房

村田喜代子さんは、私がもっとも敬愛し、信頼する作家の一人である。ナンシー関を失い、佐野洋子を失った私にとって、希望の光は、この人にある。

縦横無尽の文章レッスン」は、大学の講義の記録が主であったが、この本は、新聞掲載記事が元となっている。そして、こちらのほうが、基本を押さえ、わかりやすい。

 書くに値するものとは、読むに値するもののことである。そして読むに値するものとは、いつまでも心に残るものであり、それは次のようなものではないだろうか。
一、誰もが心に思っている事柄を、再認識させ共感させる。
二、誰もが知りながら心で見過ごしている事柄を、改めて再認識し実感させる。
三、人に知られていない事柄を書き表して、そこに意味を発見し光を当てる。

シンプルな指摘である。が、私のように、日々、だらだらと愚にもつかないブログを書き連ねている者にとっては、厳しい言葉でもある。私の書くものなんぞは、

 良くない文章とは、
1 だれにでも書けることを
2 自分だけにしかわからないように書く
ということになるだろう

の典型になりかねない。うーむ。

しかし、がっかりしてはいけない。この本を読むと、結局、しっかりと見て、しっかりと考えれば、たとえ名文にはならなくても良い文章は書けるものだと勇気が湧いてくる。文章を書くのは難しいことではない、と逆に信じることができるようにもなるのだ。

(引用はすべて「名文を書かない文章講座」より)

2012/12/18