周防正行のバレエ入門

周防正行のバレエ入門

2021年7月24日

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「周防正行のバレエ入門」周防正行 太田出版

 

裏表紙で「五番」のポーズをとっている周防監督の立ち姿が意外に美しくて、思わず手にとってしまった一冊。本当に、背筋がぴんとして、足がすっと伸びていて、周防監督、きれいでした。
 
「敬意」ということについて考えてしまった。この本は、周防監督が引退する妻、草刈民代のバレエを記録しておこうと考えて作った「ダンシング・チャップリン」という映画のプロモーションブックでもあるのだけれど、それと同時に、尊敬しあう夫婦の物語でもある。周防監督が草刈さんについて語ったり、二人が対談しているとき、その間には深い敬意が存在している。
 
草刈民代は、自分のしていることの意味をありのままにはっきりと理解し、それに誇りと責任をもっているダンサーだ。周防監督はそれを受け止め、応援し、尊敬している。そして、そんな監督を、草刈はまっすぐに信頼している。
 
その関係性のうえに、この本は成り立っている。バレエとは何なのか、草刈民代がいかにしてバレリーナとして大成していったのか、「ダンシング・チャップリン」とはどんな映画なのか。書かれているのはそういうことなのに、読み終えて最も心に残るのは美しい夫婦のあり方であり、その関係性である。
 
それにしても、バレエが見たくなってしまった。「ダンシング・チャップリン」も見なくちゃな、と思う。あれはあんまりヒットしなかったんだっけ。

2013/8/16