塞王の盾

塞王の盾

107 今村翔吾 集英社

直木賞受賞作。以前、夫が読んで面白いぜ、と言ってたのだけれど、返却期限が過ぎてしまったので泣く泣く返した本。改めて予約を入れて、やっとこさ読めました。

宣長、秀吉、関ヶ原のあたりの時代。穴太衆(あのうしゅう)という石垣造りの集団の長にして、誰にも破られない石垣を積むものを「塞王」と呼ぶ。源斎という塞王に拾われた戦災孤児にして塞王の後継者と目される匡介を主人公に、彼らの作る石垣(盾)を破るものとしての鉄砲(矛)造りの彦九郎、そして腰抜けのホタル大名と呼ばれた京極高次とその妻、初(淀君の妹)が織りなす物語。

時代物はやっぱり面白いなあ。どこまでが史実で、どこからがオリジナルなんだろうとわくわくしてしまう。人物像が魅力的で、石を運ぶ役やお初の侍女なども、人として好きになっちゃう。

誰にも破れない石垣を作り出すことで平和を守ろうとする匡介と、絶対に勝てない武器を作ることで平和を生み出したい彦九郎。もう、これって核の抑止力の問題だよね。武器はどこまでもエスカレートして、あれから四百年以上たっても、人間はまだ同じようなことをやって、なんて愚かなんだろう。

私は、旅先で城や城跡を見るのが好き。穴太衆の名前は知っていたけれど、こんな物語を読んでしまうと、これから石垣を見る目がまた変わってくるような気がする。人間ってすごいものを作り出すんだな。それが、戦争や戦いにつながらなければいいのに。