夏祭浪花鑑

コクーン歌舞伎に行ってきました。はい、プラチナチケットです。友人が、平日なら取れるけど、どうする?と聞くので、思わず「行く行く!」と答えてしまいました。1時半からの公演ですが、おちびの下校時刻には間に合いません。息子に早く帰るよう頼み倒して、おちびには、お利口に待っているようにいい含めて、行ってしまいました。

開演五分前くらいから、観客と一緒に、三々五々、役者も会場に通路から入ってきます。お囃子やお三味線も、ふうらり、ふうらり、そこらを流しながら、集まってきます。徐々に、役者が舞台に上がり始め、観客と世間話をする役者もまだいる中で、舞台がなんだか騒がしくなり、喧嘩が始まり、そして芝居の開始が明らかになります。

この導入がいいんだなあ。いかにも夏祭りという風情で。役者が、手を伸ばせばそこにいる、という始まりは、とても自然で楽しい。

始まれば、物語はテンポ良く流れます。展開が早くて、飽きる暇がない。けれど、ここぞという場面ではたっぷり見せるところもあって、歌舞伎の醍醐味と、芝居の面白さにどんどんはまっていきます。

若い役者さんたちが、それは楽しそうで、見ていて嬉しくなります。装置も大道具も、魂がこもっているみたい。勘三郎さんは、声がちょっとかすれているようですが、あの方は、興奮すると、トーンが高くなって、あんな声になりがちでは、あります。そして、七之助の美しいことと言ったら。焼け火箸を顔に当てるんですよ。思わず、「あちっ!」と言ってしまいました、私。

笹野高史さんが殺される場面。暗闇の中、ろうそくの火が揺らめく中での、壮絶なシーンです。影と光が、こんなにも効果的に使えるのか!泥水にもぐって、笹野さん、大熱演ですが、お体、大丈夫でしょうか?本当に殺されちゃった?と心配になります。

八割ほど進んだところで、結構長い休憩。なぜ?と思いつつ、はやる心を抑えて、待つ私。いや、それくらい休まないと、後が続きませんね。その後の展開のものすごさと言ったら、もう、あなた。エンタテインメントです。考えられる限りの演出を全部やっちゃってます。ここまで暴れて、大丈夫?って言うくらい、なんでもありです、すごいです。そして、ラストの型破りなことと言ったら!本当に、破るんです!!すげー!!

終わったら、スタンディングオベイションでした。歌舞伎で、通常なら、ありえないっす。でも、全員、立ったんです。鳴り止まない拍手。そして、歌舞伎で見たことがない、カーテンコール。アンコールのあと、一度、幕が下りても、まだ鳴り止みません。二度、三度。ご老人も、皆、立ってらっしゃいます。通路で、篠山紀信さんが写真を取ってらっしゃいました。最後に、勘三郎が、「皆様、本当にこんなにご声援いただいて・・」と感謝の言葉を述べ、「今日は一回公演でいいんですが・・」とちょっと笑って見せて、やっとカーテンコールも終わりました。

帰り道、一緒に行った友人は「心臓の辺りが痛いわ」といい、私は腹筋がぱんぱんに張っているのに気づきました。呼吸をするのを忘れるほどに見入っていたせいだと思います。見るだけで、こんなにへとへとに疲れるのに、演じている方は、どんだけ体力を消耗するんだろう・・でも、どんなに楽しくて、どんなに燃えているんだろう・・と、うらやましくも、心配にもなるのでした。

勘三郎さん、若いわ。あれが出来るなんて、どんな体力だろう。
あー、いいもん見たわ。これで、しばらくエネルギーが枯渇しないわ!!

2008/6/27