夜が明ける

夜が明ける

92 西加奈子 新潮社

苦しかった。何度読みやめようと思ったことか。でも、迫力に引きずられて、そして、ここから逃げてはいけないと考えて、必死に食いついた。おりしも参院選が近づいている。選挙に行く前に、みんなこれを読まないか。若者の生きづらさ、苦しさ、貧困、ヤングケアラー、奨学金返済の重圧、いろいろなものが身に迫ってくる。気が付かなくてはいけないこと、忘れてはいけないこと、人が苦しまなくていいように、心を壊さなくていいように、どんな世の中にならなければいけないか。もう一度、考え直すきっかけになる本だ。

最近自業自得だとか、自己責任だとかいう言葉をよく聞くよねって。それはもちろん、もともと適切な言葉としての機能があったのかもしれないけど、最近は、大切な現実を見ないようにするための盾になってる気がするって。だからそんな盾はいらない。みんなもっと堂々と救いを求めてって。それで、自業自得とか、自己責任とか、そんな言葉は、その人が安心して暮らせるようになって、本当に、心から安心して暮らせるようになってから、初めて考えられるんだから。初めて負える責任なんだからって。
(引用は「夜が明ける』西加奈子より)

作中の母子寮の療長の言葉だ。追い詰められて、ぎりぎりの中で生きているのに、だれにも助けを求めてはいけないと思い込んで壊れていく人がいる。でも、困っている人を助けるのは当たり前のことだ。生活保護を受けることを恥と思ったり、だからどんなに苦しくても我慢して倒れて二度と立ち上がれなくなったりするのは全然正しいことじゃない。私たちの社会は、もっと暖かく寛容であっていい場所なのに。

みんな、選挙に行こう、投票しよう。弱者を切り捨てる世の中にNOを言おう。困っている人が困っていると声をあげられる世の中であるために。心から私はそう思う、そう願う。どうか、どうにか、もっとましな世の中になりますように。投票率が上がると困ると思っている政治家たちに気が付かせるためにも、みんな、投票しようね。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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