夢の山岳鉄道

夢の山岳鉄道

2021年4月16日

13 宮脇俊三 山と渓谷社

我々夫婦は運転免許を持たない。なので、度はすべて公共の交通機関に頼る。となると、非常に不便なことも多い。行きたい場所に行きたい時にいけなかったりもする。鉄道も、路線バスも、どんどん廃止される方向にある。タクシーに頼ればいいとは思うが、田舎に行くと、そのタクシーすら見つからなかったりもする。

この本の作者、宮脇俊三は鉄道オタクの大親分である。彼の鉄道絡みの旅の話はどれも面白い。この本では鉄オタの妄想全開で、鉄道のない場所に鉄道を敷設するという妄想を繰り広げている。上高地へのアクセスを、車を一切排除して鉄道線路を引く。富士スカイラインを廃止して、そこに富士山鉄道五合目線を敷設する。屋久島の自然林に鉄道を敷いたり、奥日光までバスに頼らず鉄道で行けるようにする。出来る限り車道を廃止し、自然破壊を最小限に食い止めよう、という趣旨ではあるが、何、つまりは鉄道を作りたいのである。

でも、我が家のような車無し派にとっては、夢のような物語である。鉄道で屋久島の奥までいけたら楽しかろうなあ、とか、渋滞のいろは坂をうんざりしながらバスに揺られるよりは鉄道で行ってしまいたいなあ、とか、うっとりしてしまうのである。

妄想ではあっても、現地取材もし、現地の人の意見も聞き、用地買収の資金や方法論も考え、時刻表のダイヤまで作るという周到な計画である。現地の関係者は取材に喜んだり、逆に道路敷設に苦労した方々に苦笑されたりもする。バブルの頃に書かれた本なので、収支計画に甘いところはあるが、中には、日光へいく路線の東武線とJRの相互乗り入れ提案など、後に実現したプランもあって、なかなか慧眼なのである。

最後の数章はスイスの山岳鉄道の現地取材の話である。スイスは気取った国ではあるけれど、自然保護においては大いにお手本にするべきところがあり、かつ、鉄道を重要視しているあたりは宮脇さんのお眼鏡にかなっている。たしかにスイスの山岳鉄道は素晴らしい。ああ、いつか乗りに行ってみたい。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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