小泉今日子書評集

小泉今日子書評集

2021年7月24日

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「小泉今日子 書評集」小泉今日子 中央公論社

小泉今日子は、読売新聞の書評委員を十年にわたって務め上げた。通常、二年で任期が終わるのだが、余人を持って代えがたいということで、十年も続けていただいた、と新聞社の人が言っている。最初、依頼が来た時に、芸能人とか女優とかの名前だけがほしいのなら嫌だとキョンキョンは思ったという。彼女の「恩師」久世光彦が読売新聞社との仲立ちをしたそうなのだが、人見知りの彼女は黙ってお酒をクイクイ飲んでしまって、私の原稿の出来が悪かったらボツにできるか、と尋ねたそうだ。いや、ボツになんてできませんよ、と言われたら、じゃあ、やらない、と答えたとか。それで押し問答になってしまって、最終的に、キョンキョンが席を外した隙に、ボツにするって言っちゃえよ、と久世さんが入れ知恵して、この話がまとまったという。

文章の書き方なんてわからないから、何度でも書きなおしをさせてください、教えてください、とキョンキョンは担当に言ったという。とても苦労したという書評もあるが、思いの伝わる、美しい文章であった。

彼女の書評は、いい。紹介してある本をつい読みたくなる。そのうえ、その本を読んだ小泉今日子という人の心のありようや、そのとき考えていることが、きちんと伝わってくる。ずっと読んでいると、本のことを教わりながら、さらに、キョンキョンがどんなふうにこの十年を生きてきたか、成長してきたか、も一緒に伝えてもらっているような気がする。

アイドルという仕事は、どう振る舞ったら可愛くみえるか人を惹きつけられるかで勝負が決まる。それがしたいかしたくないか好きか嫌いかよりも、どう見えるかが優先される世界だ。でも、人が何かを語る時、それを語ることによって自分がどう見えるかを優先した言葉ほど空虚なものはない。どう見えようが、どう思われようが、私はこう思う、こうしたい、これが好きという言葉でなければ人の心に届かない。キョンキョンの書評は、私は、こう思う、これを伝えたい、という彼女でなければできない言葉で構成されている。彼女は、アイドルという仕事をしながらちゃんと自分自身というものを育ててもいたのだな、とわかる。

この本を読んだら、読みたい本がたくさんあった。そう思える書評集であった。キョンキョン、素敵だ。

2016/6/18