新選組血風録

新選組血風録

2021年7月24日

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「新選組血風録」  司馬遼太郎 角川文庫

少し前、思い立って司馬遼太郎記念館に行ってきた。有名な巨大書架を見て、やっぱり圧倒された。もっと勉強しなくちゃなー、と素直に思った。地震でこの本たちがバラバラと降ってきたら大変だろう。スタッフさんにお尋ねしたら、この間の地震では、大丈夫だったそうだ。

司馬遼太郎記念館で本を買うと、オリジナルカバーをつけてもらえる。それが嬉しくて、「新選組血風録」を買った。水戸天狗党の残党だった芹沢鴨のことが知りたかったのだ。

この本は、新選組の有名どころ、近藤勇、土方歳三、沖田総司だけじゃなくて、あまり知られていない隊士何人かのエピソードが描かれている。そのほとんどが、斬り殺されている。読めば読むほど、ばっさばっさと首や銅が飛び、血しぶきが飛ぶ恐ろしい本でもある。芹沢鴨は、二エピソードめに、早々に死んでしまった。

新選組は、敵を討ち取れなかったり、襲われて後傷を作っただけで、処罰の対象になる。仕事は、反幕浪士や長州藩士を斬り殺すことで、規則違反や態度の悪いものは、じゃんじゃん粛清される。やめさせられるんじゃなくて、斬首されたり、切腹されたり、暗殺されたりする。しかも、一度入ったら、やめるのは禁止。もうどうしようもないじゃん、そんな隊に入るのやめとけばいいのに、と読んでいて思うのである。怖い怖い。それでも、どこかに仕官して、録をもらえるのも、農民町民が武士になれるのも魅力だったのだろう。

佐幕とか尊皇とか攘夷とか、そんなお題目よりも、結局は、昔なじみ同士の仲良しグループの派閥争い、勢力争いが先にたって、壮絶な殺し合いが内部で行われ続ける。新選組がかっこいいなんて、誰が言ったんだ?と私は思ってしまう。昔から、日本人はこんなことをし続けてるのよね・・・・。

司馬さんの資料調査やフィールドワークの凄さは、読んでいてもよくわかる。とりわけ、新選組は、割に近い歴史なので、実際に年老いた元隊士に会ったことがある人の証言などが載っていて、興味深い。

ところで、話は違うのだけれど、この間、夫がテレビで「RONIN」という映画を見ていた。とあるスーツケースを奪い取る秘密の任務のために、何人かの元諜報員が雇われて、銃を撃ちあい、カーチェイスを繰り広げる。やっとスーツケースを奪い取れると、今度はそいつが裏切って逃げ出して、残りがまた追っかける・・・。

その映画が流れている間に、私はパソコンでしばらく遊び、それから風呂に入って、また出てきたけれど、いつ見ても、同じように追っかけあって、撃ちあって、殺し合い続けていた。最後は座って一緒に見ていたのだが、スーツケースの中味は何だったのか、最後までわからなかった・・・。

で、ふと思ったのだ。新選組って、これと同じみたいなものだったんじゃないかって。何のために、人を殺しているのか、それが何に役に立つのか、わかっている隊士って、あんまりいなかったんじゃないかな。ただ、武士というのは、そもそも戦うのが仕事であり、事あれば立派に切腹して果てるものである、と、それだけでやっていたんじゃないかと。

・・・なんていうと、新選組ファンには叱られるんだろうけれど。私は、やっぱり人をバッサバッサと斬り殺していく話は好きじゃないと、そういう状況に自分がいなくて本当に良かったと、そんなつまんない感想しか持てないのであった。

2011/7/23