東電原発事故10年で明らかになったこと

東電原発事故10年で明らかになったこと

2021年4月23日

17 添田 孝史 平凡社

東日本大震災から10年が経った。未だに原発事故は解決していない。誰だ、アンダーコントロールなんて大嘘をついたのは。

筆者は、原発事故について驚くほど膨大な資料にあたり、徹底的に調べ上げた。そして、あの事故は、国や東電が対策を先送りした結果招いたものであることは間違いないと結論づけている。一つ一つの小さな事実の積み上げが、それを証明している。よくここまで詳しく調べ上げたものだと感心する。

2002年には国が津波計算を要請していたのに、東電は抵抗した。2007年には、国は福島原発が国内で最も津波に弱い原発だとわかっていた。2008年に東電の技術者は津波対策が必要だと一致した見解を持っていたのに経営者が先送りをした。同年、東北電力がまとめた女川原発の最新津波想定を、東電は圧力をかけて書き換えさせた。それらのことが明らかになったのは2018年以降である。裁判で次々と新しい事実がわかったのに、断片的な報道しかなされていなかった。この本の目的は、10年間で明らかになった全体像を示すことである。

東電や国が、正しく対策し、安全策に費用と手間をかけていればあれほどひどい事故は起きなかった、ということがよくわかある。コストダウンばかりにこだわり、大事なことを見なかったことにするこの体質は、今もなお、コロナ禍で様々な場所で見ることが出来る。オリンピックだって、もはやお金の問題でしかない。

どうしてこの国はこんな事になっちゃったんだろうと、またもや思う。この本を読んで、何がいけなかったのか、これからどうしたらいいのか、みんなでちゃんと考えよう。私達の将来を決めるのは、私達だ。