桂離宮

桂離宮

2021年7月24日

桂離宮に行ってきました。
夫も私も、いろいろ他にすべきことを抱えている今日この頃ですが、何度も見学を申請しては抽選に落ちていたのが、やっと通ったのだから、行かずばなりません。これを逃したら、今度はいつになるやらだもの。

当日は、そぼ降る雨の日でありました。
私は強烈な雨女です。私が動くと台風まで背負って歩くとさえ言われます。夫は自称晴れ男ですが、私のパワーには負けるらしい。

でも、雨の桂離宮も、霧にけむった感じがなかなか素敵ではありました。

その昔、お客様は、御輿に乗ったまま入られたそうで、正門から通路を通った先に、輿を置く切石が置いてありました。そこにある門が、御幸門。

ここからは歩いて、まずは外腰掛という屋根付きベンチ小屋に進みます。この小屋には、「砂雪隠」という、砂を敷き詰めたトイレがあります。砂の上に様を足してから、砂ごと入れ替える。要は猫のトイレみたいな方式、というのはちょっと笑えました。でも、実際には使われなかった・・って、形だけかーい!こういうのを、奥ゆかしいというのかなあ。

ベンチに座ると、そてつの木が不思議な形、うごめいている人の群れみたいに正面に植わっています。島津家からの献上品・・って、島津様は、皇室とパイプを持ちたかったのかな。どうやって運んだのだろう、とあれこれ想像するのが楽しいです。


このそてつが邪魔して、なかの御殿やお庭が見えないのは、これからのお楽しみを残すためなんですって!

そこから、池沿いに州浜へ進むのですが、「水位が下がってるのかな?」と夫がつぶやきます。なんとなんと、補修修理のため、池の水を抜いてるんですって!それは残念。

松琴亭、賞花亭、園林堂、と茶室やお堂を回ります。
外付けの水屋を作ったけれど、京都の冬は寒すぎて、実際には使えなかったとか、壁を残し丸く中の基礎を見せる意匠なのに、木枠を一部、編み忘れて「忘れ窓」と呼ばれていたり、案外、ここを作った職人は、うっかりさんかもしれません。それも、また、面白い。

標高20メートルだかの小さな峠の上に「笑意軒」という田舎風の小屋。銘を書かれた額の字が、なんとも自由で、私は好きです。窓を通して向こうの景色が、まるで鏡を見ているかのように透き通って感じられます。
市松模様の襖や、矢の形、船の櫂の取っ手。斬新で、ちょっとユーモラスな工夫があちこちにあります。

すべての建物は、池沿いにあって、御幸門からずっと歩いてくると大変なので、小舟にのって移動もできたそうです。どの建物にも、小さな船着き場があって、可愛らしい。州浜の灯台と呼ばれる小さな灯篭も、飾りではなく、実用性があったのでしょう。

日頃、御殿の中に押し込められたように生活していた御公家さんや御姫様たちが、輿に揺られて、京都の中心部から、鄙びた桂まで来て。
石畳や砂利を歩き、船に乗って、美しい池の中を揺られて、茶室まで運ばれる・・・。
どんなにわくわくしたことでしょう。
桂離宮は、いわば、むかしびとのアミューズメントパークだったのではないかしら。
そう思うと、私までわくわくしてしまいます。

広庭を通って、御殿へ。御殿の中は見せてもらえないのね。

月波楼は、月見のための場所。竹簀子で月見台が池に突き出すように作られています。中秋の名月の時、ちょうど正面から月が見えるように、最初にこの場所が定められてから、離宮は作られたそうです。

そういえば、昔は電気なんてありませんでしたもの。要所要所に石灯籠が置かれています。夜は、そこに灯りがともされ、その周りだけがほんのりと明るく、月夜は月明かりがそれはそれは美しかったのでしょう。

書院の玄関の御輿寄は、障子が徐々に広くなって、また、通路が建物と角度をつけて置かれているため、遠近法で空間の広がりと奥行きを感じさせるのだそうです・・・が。説明する方が、実は、これ、見学の方はみなさん、遠近法をあまり感じないとおっしゃるので、説明しにくいんですよね、なんてこぼされてました。

遠近法はルネッサンスの手法が、宣教師を通じて入ってきたのだとか。広庭の作りや、四角い垣の作り方なども、西洋のテイストが混じっているんだそうです。うーむ、興味深い。

建築趣味に付き合わされて、なんて思ってるんじゃないかと夫は気にしてましたが、いえいえ。すごく面白かったです。できれば、違う季節、違う天候の時にもう一度、行きたい。
というより、本当は、解説なしで、自由に歩かせていただきたい。宮内庁管理だから、無理なんだろうなあ・・。

集団で、解説を聞きながら回ったのですが、同行の方たち、面白い人が何人かいて、それも楽しめました。解説のお兄さんを質問攻めにして「わかりません。勉強しておきます」を何度も言わせたお元気なおばあちゃまとか、しっかり手をつなぎ合ったカップル(尾道の旅以来、この手の人たちに、よく会うなー。)の男性の方が、いちいち解説に合いの手を入れて、それがまた、妙に笑えたりして。

せっかく京都にいくのだから、京料理でも食べようか、なんて言ってたのに、見学が終わったら、ふたりともお腹ペコペコで、お店の当たりもつけていなかったため、結局、桂の駅でラーメン定食になっちゃいました。ちょっと残念。でも、天津飯、美味しかったけどさ。

2010/1/22