正しい女たち

正しい女たち

2021年6月26日

46 千早 茜 文芸春秋

若いなあ、という感想を持ってしまうってことは、おばさんなんだなあ、私、と思ってしまった。とほほ。

いくつかの短編が集めてある。何でも私のことをわかっているつもりで、自分の価値観を押し付けてくる母親の話。なんでもわかり合ってるつもりで、実は密かにコントロールし合う友達関係の話。期限付きで離婚する、と決めたらびっくりするくらい互いに優しくなれた夫婦の話。少女の頃からキレイで、それを武器に生きてきて、三十代に突入して戦えなくなってきた女性の話。どれも若さの苦味に満ちている。そんな中で、海辺の街で、先生と呼ばれる中年男性に何故か勉強を習って、大学に行くまでの話は読後感が良かった。

正しいって何だろうね。結婚していたら性的な関係性が正しくて、壁を隔ててその声が毎晩聞こえちゃっても夫婦なんだから当たり前と言われても、ねえ。それに眉をひそめたり、思わず注意しちゃったりするおばちゃんが悪役のように登場するけれど、私はおばちゃん側に立つ人間なんだわ、きっと。迷惑だもの、そんな声を毎晩聞かされたら。

女が女であることの苦味に満ちた短編ばかり。確かにこの世はそんな矛盾に満ちているものね。この怒りも葛藤も、知ってるし、わかるのよ。でも、若いなあ、と思ってしまった。別に馬鹿にしてるわけじゃなくて。正しくあるのって、難しいね。正しいって、何だろうね。