武庫川女子大学甲子園会館 その1

武庫川女子大学甲子園会館 その1

2021年7月24日

先日、武庫川女子大学甲子園会館に行って来ました。

ここは、昭和5年竣工の旧甲子園ホテルを、昭和40年に武庫川女子大が譲り受け、教育施設として再生した建築です。設計は、フランク・ロイド・ライトの一番弟子、遠藤新です。以前、明治村で見た旧帝国ホテル(フランク・ロイド・ライト作)に雰囲気が似た建物でした。

普段は学校の施設として利用されていて、一般の見学はできないのですが、11月に特別公開があるというので、予約してあったのです。指定の時間より、少し早めに着いたのですが、既に多くの人が集まっていて、第一班は、先に出発しました、というので驚きました。我々は第二班ね。だいたい十数名で事務局長さんらしき方に引率されて、中へ入りました。

旧甲子園ホテル、とはいっても、実は、ホテルとして使われたのは、たったの14年間だけだそうです。その昔、甲子園付近は一大リゾート地だったんだそうです。南には海があり、ゴルフ場やテニスコート群、競馬場も2つ、遊園地、プール、野球場。残っていたら、舞浜なんかに負けなかった、と解説者さんは意気盛んです。

それがなぜ、ホテルをやめてしまったかというと、戦争のせいなんですね。超高級ホテルだった甲子園ホテルは、大金持ちや、外人さんの客が多かった。戦争で、リゾートでのんびりする人がいなくなって、ホテルとして立ち行かなくなったそうです。

海が近かったので、海軍病院として収用され、戦後は米軍の将校宿舎とクラブとして使用されました。米軍から返却され、大蔵省の管轄を経て、建物を保存したいという武庫川女子大に、西宮市も協力して、移譲を受けたものだそうです。

最初に入ったのは、ホテル時代に酒場だった部屋。ここの床のタイルがとても素敵です。昭和初期の職人さんたちの心意気が伝わるような明るく楽しく遊び心にあふれたタイルです。

ライトの作った帝国ホテルに対し、甲子園ホテルは、欧米風のホテルの良いところと、和風旅館の良いところを併せ持ったホテルにしようというコンセプトがありました。ホテルのトレードマークは、打ち出の小槌です。建物のあちこちに、打ち出の小槌のマークを見つけます。

和風のテイストが、メインホールに見られます。照明に、障子が入っているのです。

壁には金泥が塗られていて、往時はそれこそ美しく光り輝いていたことでしょう。米軍が使用している間、かなり粗く使われたらしく、あちこちが痛み、暖炉にはペンキが塗られ、雨漏りや床の抜けなど、かなりひどい状態で返却されたそうです。それを、ここまで立派に修復されたことに、敬意を感じます。

ホールを外から見たところです。フランク・ロイド・ライトの影響を受け、この建物も、光と影を意識して立てられています。天井や柱の水玉模様に光があたって作り出す影はとても美しいそうです。(その日は小雨交じりの天気で、ちゃんと見られなくて残念でした。)

「武庫川女子大学甲子園会館 その2」へ続く

2011/11/22