流浪の月

流浪の月

2021年4月2日

6 凪良 ゆう 東京創元社

2020年本屋大賞受賞作。

夫が先に読みだしたが、途中で嫌になってやめた、という。どこらへんでやめたの、と聞いたら、女の子が若い男性に連れて行かれたあたりで、という。まだ始まりの始まりじゃないか。でも、そこでやめたくなる気持ちは、わからんでもない。

だが、しかし。この物語は、女の子が若い男性に連れて行かれるとどうなるか、と誰もが想像する出来事とは全く違う展開になる。むしろ、皆がそう考えてしまう、ということが大きな盲点というか問題として立ちはだかってくる。真実は、そこにはない、ということを誰もが取り逃がすからこそ起きた悲劇。

そこにいろいろな問題が絡んでくる。理想の子供を育て上げようとする母親、それに答えられない子供。我が子より恋人の大事な母親、そんな母親を許してしまう子供。家庭内の性虐待やDV問題。善意で人を助けようとする人々。ネット情報の怖さ。様々な要素を巻き込みながら、それでも最後は救いがやってくる。それを救いというかどうかは読み手によるのかもしれないが。

いろいろな現代的な問題を含んで入るけれど、結局の所は、当たり前の普通になれない、どうしてもはみ出してしまう人間の側に立って、それをすくい取るような物語だったと思う。はみ出しものだった私には、そう感じられる。