海をあげる 

海をあげる 

2021年3月28日

3 上間陽子 筑摩書房

 第14回池田晶子記念 わたくし、つまりNobody賞受賞作。

胸打たれてしまった。

ご飯をおいしく食べること、人と繋がり合うこと、自分の生きる場所を愛すること。静かに暖かい生活と、傷だらけになる心と、踏みにじられるできごと。いろんなものが混じり合って、日々が過ぎていく。作者は、それらをちゃんと受け止めて、自分にできることを探して、しっかり生きている人だ。

作者は、子供を育てながら、沖縄で、家庭内で性暴力にさらされたり、恋人に搾取されたり、若年出産したりする女の子たちの声を聞き取り調査し、書き続けている。近親者による性暴力の話は、深く密かにしまい込まれて、なかんか表に出てこない。けれど、実は驚くほどの被害者が世の中にはいる、と私も長い日々の中で何度も気が付かされてきた。

そういう人たちの声をすくい上げたい。気がついてほしい。どこかでもっと自分らしく生きられる場所があると知ってほしい。きれいごとではなく、それは、私達自身の問題なのだ、と心から思う。

沖縄の美しい海に土砂を平気で投入する人たちにも、女の子なんて好きに扱っていいのだと思う人達にも、読んでほしいと思う。この本にあふれる、本当に美しい言葉に打たれてほしいと願う。