男の子になりたかった女の子になりたかった女の子

男の子になりたかった女の子になりたかった女の子

2022年1月21日

4松田青子 中央公論社

題名に惹かれて読んだ。不思議な短編集だった。すごくよく知っているありふれた感情が描かれているようにも思えるし、でも、こんな小説、読んだことがないわとも思った。自意識過剰で自分をうまく表現できなかったり、クレペリン検査なんてものに真剣に取り組んで、誰よりも正確に立派にやりおおせてしまう自分であることに唖然とし、その結果得たものについて考え込んでしまうことがあったり。

「誰のものでもない帽子」はしみじみ読んでしまった。小さな子供を抱えて主婦が家出をすると、納豆とリンゴジュースとヨーグルトを買い続ける。毎日同じことを繰り返すだけで時間が過ぎてしまう。子供が気に入った帽子を無くしたら、どうしても、それ以外の帽子を探さねばならない。目の前のことを淡々とこなさねばならない。そうやって、子育ての時間は過ぎていく。たとえ、夫がDVであろうと、帰って来いとLineをよこし続け、最後には理不尽な要求だけになっていくとしても。

そういえば、体育の時間のブルマは苦痛だったな、と思い出す。なんであんなものを私たちは履かねばならなかったのだろう。スクール水着も嫌いだったな。しかも、それが嫌だとか嫌いだとか言ってはいけないと思わされていた。一体、誰に、どんな風に「思わされて」いたんだろう、と今頃不思議に思う。

そんな気持ちを描いている短編集。これを読んで、わかるわかる、と思うのは、女性だけなんだろうか。