統合失調症がやってきた

統合失調症がやってきた

2021年7月24日

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「統合失調症がやってきた」ハウス加賀谷 松本キック イースト・プレス

ハウス加賀谷は、かつて「ボキャブラ天国」というTV番組で活躍していた芸人である。当時からどこか変わっているという感じがあった。彼は、統合失調症を発症し、投薬治療を受けながら芸人をしていたのである。「ボキャブラ天国」の終了の前だったか後だったかは分からないが、彼はテレビから姿を消した。だが、強烈な印象があったので、彼の名を忘れてはいなかった。

病気が悪化してしばらく入院していたが、この度復帰したらしい、本も書いたらしい、と知ってすぐに図書館に予約を入れたら、気が遠くなるほどの待ち順になっていた。途中、引っ越しがあって新たに予約を入れ直したりしたので、ものすごく待たされた。やっと手に入ったのが「セラピスト」の直後だなんて、すごいタイミングである。

加賀谷は箱庭療法や絵画療法などの認知療法は受けておらず、薬物療法一本である。入院中は毎日筋肉注射を受けたというから、相当量の薬物による治療だったと思われる。今は新薬が体に合ったので、なんとか社会復帰を成し遂げているそうだ。

加賀谷は、塾通いを重ねた小学生の頃から発症し、自臭恐怖症もあったという。エリートの父親は家では酒乱で、母は一人息子に習い事と塾を強要し、その期待に答えねばというプレッシャーが強かったという。そのことが発症にどの程度影響しているのかどうかは定かではない。が、こういう話を読むと、子どもを育てるって難しい・・・と思わずにはいられない。我が子に幸せであってほしいと願う親の心が一歩間違うと、もしかしたらこういう方向に向かってしまう、という恐れがある。そうでなくても、アダルトチルドレンだ、毒母だと、母親は何かと責められる。自分が子どもである立場からすれば、そうだそうだ、好きにさせてやれよ、と思うが、母親としての立場からは、何が正解なんだ?といつも考えこんでしまう。もっとも、この本の中で、加賀谷は母にとても感謝しているし、大事に思っていることも伝わっては来るのだが。

復帰出来てよかったね、これからも無理しないでやんなよ、というのが素直な感想である。
2014/6/16