街場のマンガ論

街場のマンガ論

2021年7月24日

「街場のマンガ論」
  内田樹 小学館  13

昨日届いた「本の雑誌」で、雑誌の最新号が届かない仙台市のとある書店で、男性客から譲られた一冊の「少年ジャンプ」を店頭で立ち読みOKにしたところ、順番待ちにもなる人気となり、十キロも離れた自宅から自転車で読みに来る子も現われたという話を読んだ。

マンガの力を感じる。というよりも、人は、生きるに苦しい状況下で、求めるのは食料や環境だけではないのだ、と改めて思う。どんな時にも、心を温める、支える、心が楽になる何ものかを必要とするのだ。そして、本という媒体は、電気もエネルギーもなしに、多くの人を助ける力を持っている。

内田樹氏は、マンガが好きな人だ。親が漫画を買うことをよしとしない人だったので、友達の家に上がりこんで、マンガをむさぼるように読んだ、というのが私と同じで、親近感を持った。男性にはそう多くない、少女漫画を読むリテラシーを備えた人だというのも、うれしいじゃないか。かと言って、それほどコアでディープなマンガ読みというわけではないみたいなので、いしかわじゅんのような深い洞察を期待してはいけない。それでも、世界中の少年たちに、「バガボンド」を読んで欲しいとか、「エースをねらえ!」から、師弟関係とは何か、のすべてを学んだ、と言い切ってしまう程度には、マンガを愛しているのだ。

私が面白かったのは、著作権問題について、以前、岡田斗司夫が言っていたのとほぼ同じ意見を内田氏もここに書いていたことだ。

物書きのはしくれとして基本的なことを確認させて頂きたいが、私たちが何かを書いて発表するのは「一人でも多くの読者に読んで欲しい」からである。
頒布形態がどんなものであるかは副次的なことである。
古本屋であろうが、図書館であろうが、インターネットであろうが、どんな媒介を経由したにせよ、書いたものが一人でも多くの読者の目に触れれば私はうれしい。
金銭的なリターンはあればそれに越したことはないが、なくても別に構わない。
書いた本を全部裁断する代わりに一億円払うというオプションと、その本を全国の図書館に無料配布するのとどちらがいい?と問われたら、私は迷わず後者を選ぶ。
いま、一瞬でもためらった人は物書きに向いていないと私は思う。
(引用は「街場のマンガ論」より)

さて。この本を読んでしまったので、「バガボンド」が読みたくなってしまった。「バガボンド」って、いま、何巻まで行ってるんだろう。こうやって、また、マンガの海に、ずぶずぶと入っていってしまうのだなあ・・・。

2011/4/15