身分帳

身分帳

2021年7月13日

53 佐木 隆三 講談社

西川美和「スクリーンが待っている」に登場した映画「すばらしき世界」の原作。

親に捨てられ、孤児院で育ち、人生の大半を獄中で過ごした中年男が網走刑務所を満期で出所し、人生を再スタートする。彼を支えようとする弁護士や親切にしてくれる近所の人達もいる。だが、ついカッとしてしまったり、うまく立ち回れなかったりで、あちこちにぶつかってしまう。戸惑いながら、間違いながら、なんとか生き直そうとする男の姿が描かれている。

ずっと刑務所で暮らしていて、いきなり外に出たら、どうしたらいいんだろう、とか。子供時代を無茶苦茶な状態でなんとか生き抜くと、その後の人生は大変だよなあ、とか。そんなことを考え考えしていると、最後に「人間ってなんだろう」という問いに行きつく。どんな人も、どんな人間も、一生懸命生きている。うまく行かないこともたくさんあるけれど、人はみな、愛おしい。この作品を映画化したいと思った西川美和もすばらしい、と思った。映画が見たい。