連休の旅

尾道に着いたら、もう夕方でした。タクシーで、山の上の旅館へ。雨が降っていたのは残念で、昨夜の三日月は見事でしたよ、なんて聞かされて。

向こうに見えているのは、もう島なんですか、と夫が尋ねたら、向島という島なんだそうです。渡船が三本ほど違う場所から出ていて、五分で着きます、100円です、と聞かされました。瀬戸内海の地図は知っていましたが、あらまあ、湖か池みたいに、向こう岸が近いのね、でも海なのね、と改めて思います。
展望風呂から、向島がよく見えました。綺麗な眺めだけど、パチンコ屋さんのネオンだけは、感心しないな。

たくさん歩いたので、夜は早々におちびも夫もダウンしてしまいました。私は一人で「対岸の彼女」を読み終え、友人にメールを書きます。息子がいたら、カタンができたのにな、と少々さびしい。

朝から、尾道散歩が始まりました。狭い斜面にお寺がいっぱい、驚くくらいたくさんの文人の碑があります。猫も多いのよ。坂をどんどん下りて、下まで行ったら、今度は登って。大林宣彦の映画のロケ地もたくさん。「転校生」で転がり落ちた神社の階段、撮影が怖かっただろうと思う急坂です。原田知世が歩いたタイルの道もかわいらしい。曲がりくねって、人がひとりやっと通れるような道が続いて、迷子を楽しむしかないような。
「ベニスってこんな感じ」と夫が言いました。それは、楽しそうだ。

お腹がすいたおちびが不機嫌になってきたので、食べ物屋を探しますが、どうも夜にならないとお店が開かないようなところばかり。海沿いにやっと料理屋さんを見つけます。そこは、渡船の乗り場になっていて、食後は、向島に渡りました。屋根もないそっけない船に、五分も乗らずに到着。お客は、我々のほかは、地元の人らしき数人と、中年のカップルだけ。

向こうに着いたはいいけれど、なんにもありません。映画のセットに使ったという待合室のみ。仕方ないので、この島にあと二ヶ所あるらしき別の渡船乗り場まで歩いて戻ろうと言うことになりましたが、地図もなく、なんとなく方向だけ定めて、歩き出します。一緒に乗ってきた中年カップルが、実に嬉しそうに手をつないで歩いていくのが見えました。

2009/12/2