14歳からの哲学 考えるための教科書

14歳からの哲学 考えるための教科書

2021年7月24日

「14歳からの哲学」池田晶子  トランスビュー

これがね。とっても面白かったんですよ。作者、亡くなってしまいましたね。私と大して変わらない歳なのに。死ぬって事についても、ずいぶん言及してましたけど、何か予感があったのだろうか・・。

私はカントもヘーゲルも知らないです。哲学を学んだことは、ほぼありません。強いて言うなら、シモーヌ・ベイユは読んだことがあるけど、あの人は哲学だっけ?

という程度の、哲学に全く無知な私ですが、この本に書かれていることは、ほとんど知っていました。という言い方は傲慢かな。じゃなくて、この本に書かれているようなことは、ずっと前から、何度も何度も私の心の中で、こねくり返し、考え続けてきたことばかりでした。と言っても、答えはぜんぜん出ていなかったりするんですけどね。おお、私って、哲学的だったのね!なんて。

でもそれは、私が優れて哲学的だということではなくて、普段、子ども達との会話の中でも、ふっと出てくる言葉、疑問、問いかけ、そういうものがここには集められ、整理され、深く考えられ書かれているってことです。

お母さん、なんで僕は僕なの。僕はどこから来たの。
お母さんを選んで生まれてきたわけじゃないんだよ、気がついたら生まれてたんだよ。
生きてるって、どういうこと?
思ってるって何?何も思わないって事、ある?

・・・こういう疑問はごく小さな子どものころから、心の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えていくもののように思います。私は、自分が生きているってどういうこと?と思ったら、なんだか怖くて怖くて仕方なくなって、母親にしがみつきたくなった、小学校低学年の頃の自分の不安な気持を今でもありありと思い出せます。

生きるってどういうことか。
なぜ、生きるのか。
正しいってどういうことか。悪って、何か。
永遠とか真実とかって、あるのか。
世界って何、宇宙って、何。

とりとめのない、答えのない、考えずにはいられない問題との向き合い方、考えるということが、14歳に向けて書いてあります。でも、それは、子供向けにレベルを落としたものでは全くない。とても深い。そして、哲学は、偉そうな物識りの賢い人が語るものではなく、人間誰もが考えるものなんだと言うこともわかります。

どんな本を読んでも。どんな人と会っても。どんな経験をしても。この本に書かれているような問題に、繰り返し、繰り返し立ち戻って、私は生きているのだなあ、と思います。考えるのが好きな大人、考えたい大人が読む本でも、ある。

2008/1/22