PTAって・・・和田中のニュースから考えたこと

杉並区の和田中学が、PTA協議会からの脱退を決めたニュースは、少なからず私の周囲に反響を呼びました。割に近い場所だということもあるのでしょう。他人事ではなく、自分達にも関係のある出来事だと感じられました。

その脱退がどのような経過で決定されたか、情報が全くないのでわかりません。トップダウンで決定がなされたのか、運営委員会や総会で会員の決議を経たものなのか、どちらなのでしょう。PTAを解散するわけではなく、地域推進本部の一事業部として吸収し、保護者の会として存続するのだそうです。保護者達は、この決定を、どのように受け止めているのでしょう。私は、それが、知りたい。

PTA。子どもを学校にやっている保護者なら、誰しも、いろいろな思いがあります。委員や役員決め、毎年、もめませんか?ヒラならまだしも、本部役員や、委員長クラスだけは避けたいと思う方、多くありませんか?仕事や介護や病気など、「できない事情」の披露大会が始まったり、くじ引きが当たって、本当に泣き出してしまう人がいたり。

いわゆる本部役員というものに、私もなったことがあります。問題の、PTA協議会関連の仕事を担当していました。区内の全小学校の代表者が毎月集まって、定例会議を行うほか、近い地域で情報交換会をしたり、スポーツ協議会や、講演会、広報を作ったり、区長や教育委員会との話し合いもありました。とにかく忙しかったです。私は決まった仕事をしていないので、何とかこなすことができましたが、これを、普通に働いている保護者にやれというのは無理です。未就学の小さな子どもを抱えている人も、かなりたいへんだと思います。しかも、無給で、これだけの時間拘束を受けるというのは、やっぱり、しんどいよなあ・・と言うのが正直な感想です。

とはいえ。とても大事な仕事をしているのだ、という実感はありました。
一例を挙げると、例えば、給食。私の住んでいる区では、ほとんどが自校方式なのですが、給食の民営化が進められています。献立を決めたり、指導を行うのは学校の栄養士ですが、民間企業が、給食調理に当たるのです。民営化を進めたい区の方針と、それへの疑問、不安を持つ保護者との問題の解決のため、PTA協議会では給食派遣委員制度が作られました。PTA代表者が、他校の給食を試食し、その後、校長、栄養士、調理員、自校保護者代表を交えて給食協議会を行うのです。自分の学校の栄養士や調理師に直接、文句は言いにくいものですし、また、慣れて気がつかないことだってあります。そこで、あえて他校の委員が定期的に給食をチェックし、問題点を指摘する場を設けるのです。このシステムは、実際に、大変有意義なものとして機能しています。調理員の配置換えや、調理室、調理法の改善など、目に見える形で効果が表れています。

他にも、学校施設の拡充整備の要求を、学校側からだけでなく、PTA協議会から行うことで、保護者の意見を区に直接届けたり、さらには、区長や教育長との懇談会で、各校が抱えている具体的な問題点を、教師からではない、保護者の目からの現場の声として訴えることができます。一校の力ではできないことも、区内全校が集まれば可能になります。校門の警備員の配置や、学級崩壊状態になっている教室への具体的な対策など、PTA協議会の働きかけによって実現した事柄だってたくさんあるのです。

その一方では、何もこんなことしなくても・・と思うようなことも幾つかありました。何度も行われる講演会や講習会など、確かに意義深いけれど、必ず行かなきゃいけないの?と思ったり、懇親を深めると称しての夜の飲み会などは、正直、パス!を決め込みました。毎年発行される決まりきった文書類など、作らなきゃ済むものもきっと多いはず。そういう無駄な行事や文書作成事務などに費やす時間を、省けるものなら、省きたい!とも思います。本当に必要な仕事は、実は半分くらい?と思ったりもするのです。

和田中の前校長の新聞記事の中で、「面倒な保護者の対応は自分が一手に引き受けた」という内容が印象に残っています。たぶん、今時のモンスターな親にも会われたのでしょう。役員、委員決めで、誰もが後ずさりする光景も、ご覧になったのでしょう。文句しか言わない親、誰もやりたがらないPTA。そんなら、止めちまえ!までは行かないけど、せめて縮小しちまえ!くらいな気持ちになるのは、すっごく、わかります。そして、縮小しようとするとき、一番ネックになるのは協議会です。いろいろな仕事の分担が回ってきますし、会長、副会長といった役職の存在が前提に組織が組まれていますから。PTAを思い切って変えるには、協議会を脱退するしかない、という道筋も、よくわかるのです。

私は今、読み聞かせボランティアの代表をやっています。毎年何人かのメンバーが卒業し、新一年生の保護者が、どっと新規加入する・・のが例年だったはずなのに、今年は、三人しか入りません。出たのが八人ですから、大赤字です。というのも、低学年の少人数学級制が導入されて、クラス数が増え、一クラスの人数が減りました。一クラスで委員になる人の数は変わっていませんから、全体として委員の人数が大幅に増え、学校で何かやろうと思う人のほとんどが委員になってしまったのです。その結果、ボランティアに回る人の数もすっかり減ってしまって。もちろん、委員との兼任はできますが、委員になったら手一杯・・というのは、わかりますしね。

なんだかんだで、PTA活動も、読み聞かせのようなボランティア活動も、曲がり道に来ているのだと思います。仕事をする母親が増えたこともありますし、それから、子どものことは学校に任せて、自分は関わりたくない、と考える親も確かに増えています。モンスターといわれる人ばかりでなく、全体に、わずらわしい人間関係を避けたいと思う人が多くなっていると思います。というか、実は私だって、その中の一人だったはずなんですが。

PTAの委員は、たいてい一年交代なので、どうしても活動が前例踏襲になります。新しく始まったことは翌年から前例として引き継がれ、今までやってきたものを廃止するのは難しく、仕事は増える一方です。でも、それではもうやっていけなくなっています。どこかで、ばっさりと切り捨てて、本当に必要なものだけを選び取る作業が必要になっているのだと思います。

読み聞かせも、今まで我が校では毎週全クラスで行われていましたが、これを維持するのはほぼ難しくなりました。せっかく今まで培われてきた活動を縮小するのはとても辛いのですが、ボランティア一人ひとりの負担をこれ以上増やさないためには、時々お休みを入れつつ活動するしかありません。残念ですが、これが、現状に即した活動方法なんだと思います。

保護者が、学校とどうかかわっていくか。PTAも、ボランティアも、変わっていかねばならないときだと感じています。和田中のやり方が、正しい方法だったのかどうか。それは、現場の本当の声と、これからの活動を見ていかねばわかりません。評価がなされるのは、これからであり、ぜひ、現場の声を報道してほしいと、私は願っています。

2008/5/8