50歳になりまして

50歳になりまして

21 光浦靖子 文芸春秋

「私が作って私がときめく自家発電ブローチ集」がとてもよかったのでエッセイも読んでみた。光浦さんは現在カナダ留学中であるが、その直前に書かれたのがこの本である。

カナダに留学しようと決めて、仕事も整理し、家も退去を決めたらコロナ禍が始まった。期限に家は出ねばならない、仕事はない、カナダにも行けない。宙ぶらりんで妹の家に居候しながら苦境に立たされていることをテレビで語ったら、そのいきさつをウェブで書いてみろと文芸春秋に言われ、書いたら思いがけなくバズって本を出すところまで行きついた話。

光浦さんはとても繊細な人である。あのブローチを見ればわかるよね。人と同じにできない苦悩を子供時代から背負ってきた、という。わかるわー。子ども時代、クラスのグループにいやおうなしに入れられ、ある日突然無視され、訳がわからない。と思ったら、ある日、「許してあげる」とボスに言われる。「なんで無視したかわかる?やっちゃん、一人でトイレに行ったよね?」「この間テストの点を聞いたら教えてくれたよね。あれって自慢だよね。」とか言われる。あーわかるわかる。そういうときの順応できなさ具合、すごくわかる。その積み重ねが、人間関係への自信のなさにつながってしまった、らしい。私なんぞは、その積み重ねの果てに開き直ってしまった口だが。

仕事の中でも、人間関係の中でも、私は何をしているんだろう、わたしでなきゃいけないことってあるんだろうか、とうろうろしているうちに50歳になって、家庭もない、確たる業績もない、これだけは、というものもない、なら、広く浅く、いろんな事やるしかないじゃない、昔やりたかったのにできなかったことをやるのもいいじゃない、と思うようになったらしい。わかるわー。と、私はわかるわかるいいながら、頷きながら読んでしまった。おばさんだからね。

この本は、ものすごく素直に正直に書かれている。そして、ダメなところも含めて、光浦靖子という人がとても素敵で愛らしく見えてくる。カナダで楽しんでくれ、良い人生だと思ってくれ、と切に願う。光浦靖子、実はとってもいい女だね。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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