52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

45 町田そのこ 中央公論社

本屋大賞受賞作。ということを、今、知った。予約を入れてから時間がかかりすぎて、読もうと思った理由をいつも忘れてしまう。それから、どういう小説なのかも全く予備知識なく読み始めることになる。クジラの生態にまつわる話かなあ、なんて思いながら読んだら、全然違った(笑)。

テーマは虐待。母親に虐待されて育った女性が、虐待されている子供を助けようとする話、と書いちゃっていいのかな。これから読む人は、これ以上読まないでね。ネタバレするから。

過疎の漁村に移り住んだ若い女性。なぜ、彼女がそこに住むことになったのかが、床修理にきた若者とのかかわりなどから徐々に明らかになる。そこに、虐待されていると思しき子供が加わる。敬意を払われるべきとされている元校長の娘がわが子に何をしているのか、それを助けようとする彼女がどんな半生を送ってきたのか。それ以外のいくつかの、人間が虐げられる要素も相まって、様々な問題が起きる。それを助けようとする友人も現れる。

最終的に前を向く終わり方ではあるのだけれど、なんだかなあ、と思ってしまった。こんな風に行くかいな、現実ってこんなかな、と考えていて、ふと気が付いた。本当じゃないように思えるのは、現実がどうであるかということではなく、この物語の中で、それが本当に見えないからなのかもしれない、と。生き生きと人物が立ち上がって説得力を持っていたら現実にはあり得ないような展開であったとしても、そういうことだってるよなあ、と思えたのかもしれないじゃない、と。

愛(いとし)という少年にリアリティが足りない。「贖罪」なんて難しい言葉を使って彼に話をして、伝わっているとは思えない。愛を引き取ることになる、彼の祖母に当たる人も、都合がよすぎる。最後に向かって、必要な人が必要性に応じて登場した気がする。言いたいことはわかるけど。物語を大甘でなく、それでいて意味ある終わり方に持っていきたかったのだと思うけれど。

読み終えて、どこか納得しない。もしかしたら、こういった虐待の話をしばらく読まないほうがいいのかもしれない、とちょっと思う。納得しないのは、私の方に問題がある、のかもしれない。わからんけど。とはいえ、読み始めないとどんな物語かわからないんだよなあ。困ったものだ。

カテゴリー

サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

関連記事