45 山脇りこ だいわ文庫
著者は、各種メディアに和食をベースにした季節感のある家庭料理を紹介する人らしい。私は初めましてだった。この本は料理本じゃなくて旅の本。作者は、題名通り50歳からひとり旅を始めたそうだ。とはいえ、小心者で用心深いたちだから、家族旅行の前乗りで先に海外の旅先に行って一人で過ごすとか、何度か行ったことのある国内旅行先に行くとかなので、ハードルは案外低い。しかも、若者のひとり旅のように安くあげればそれが一番、とは思っていないので、それほどお高くはなくとも清潔感があって、しかもできるだけバスタブ付きのホテルを選んだりしているあたりは大いに共感ができる。(私たちも海外旅行先はバスタブ付きをメールで確認までして探している。)
私たちも、とさっき書いたけれど、そう、私はひとり旅はしない。基本は夫婦旅である。理由はごく簡単で、私が寂しがりのおしゃべりだからだ。一人でいるとつまらないし、ご飯を食べても今一つ美味しくない。そして良い光景や良い体験に出会ったら、そのことについて、その場ですぐに語り合いたい!でも、この著者は一人でも大丈夫なんだそうだ。そういえば私にも一人でいる時間がどうしても必要な友人がいて、たとえ連れのいる旅でも、基本は一人行動をしたいと言っていたっけ。人それぞれなんだなあ。
著者、山脇さんのひとり旅は、でも楽しそうだ。あとからすぐに相方さんが合流したりするし、自分で自宅に絵葉書を送ったりしている。結局、最終的には誰かと楽しみを分かち合うことが見えているからこそのひとり旅なのかもしれない。一人でご飯やさんに行くのが難しそうだったら地元のデパートに入って地下でおいしそうなものを買い込んでホテルで食べたりもするし、夜、飲みに行っても(この人は自然派ワイン好きらしい)早めに切り上げて、夜八時ごろまでには帰るようにしているという。私たちの海外旅も市場のデリカテッセンでお惣菜を買ってきて部屋で食べるのが楽しかったりするから、よくわかる。
パリでおいしそうなフロマージェリーに入ってチーズをいくつか買ったら、そこのレジのお兄ちゃんが、そのときパリで開催されていた日本画家、伊藤若冲の展覧会のポスターを見せてくれて、それでそのまま若冲を見に行ったエピソードなんか素敵。長い行列を並んで待っていたら、一緒に待っていたパリのマダムにあとで握手を求められ、若冲は素晴らしい、的なことをフランス語で言われたらしい。そういうことってあるよな。私たちもスペインでドラゴンボールファンの青年のタクシー運転手に日本アニメについて熱く語られたことがあったっけ。
この本はちょっとしたガイドブックになっていて、日本各地やタイ、台湾、パリなどの、一人でも入りやすいお店やホテルが紹介されている。図書館で借りたけど、目的地が合致するのなら、これ、買って旅に持っていったら役に立つかも。ちなみにこの人のおすすめするナチュールワインで検索をかけたら、我が家のすぐ近くにもおすすめのレストランを発見。いずれ行ってみようかな、と思ったりもした。
一人旅派でも、そうでなくても、旅好きの中年以降の人なら読んで損はない本だと思う。