A子さんの恋人1~7巻

A子さんの恋人1~7巻

19~25 近藤聡乃 KADOKAWA

海外旅行用に買った漫画、全7巻。夫がジブラルタルのバックギャモン大会に出場中、ロビーで読もうと準備していたのに、なぜか家で寝っ転がって読んでいる。いつ緊急連絡が入るかわからないので、映画も見に行けない。でも、案外のんきに日々が過ぎていく。そんなこと言っていいのかどうかわからないが。年老いた母が病床で頑張っているのだから、私もじっと待つしかない。

この漫画は、たしか北村薫が本の中で題名に触れていたはずなんだけど、いったいどの本だったか探しても見つからない。「神様のお父さん」だったような気がするんだがなあ。初めましての漫画家なのに全巻買いしたのはよほど信頼する人から勧められたからのはずなんだが。

NYに留学していたA子さんはビザの関係で一時帰国。留学前に付き合っていた恋人のA太郎くんとは正式には別れていない。NYには恋人のAくんが待っていて、結婚しようと言われている。どうしたらいいかわからないA子。どっちにもはっきりしたことが言えない。

いったい何なんだ、この漫画は、と最初は思った。A子はそんなに魅力的でもないのに、なぜかモテモテで、でも、モテモテであることをこれっぽちも享受しないでぐじぐじ悩んでいる。A子にぞっこんのA太郎もモテモテで、彼に夢中な女の子が周りにいるのに全然それがうれしくない。A子に嫉妬したりイラついてる女友達も何人もいるのに、いつのまにか彼女たちもなぜか良い友達である。

はっきりしないストーリーだなあ、と最初は思っていたのに、だんだん登場人物ひとりひとりが好きになり、思っていることがよくわかるようになり、気が付けば応援している。A子も、A太郎も、魅力があり、才能があるのに欲がなく、自分が好きではなく、生きるのに戸惑っている。そうだそうだ、若い頃ってこんな感じだったわ、なんてアラカンのおばちゃんはいきなり思い出すのである。自分の持っている良きものに気が付けずに、おろおろと自分を見失っている時期。周りの友達も、みんなそれぞれにあがきながら、もがきながら、一生懸命生きてるよなあ、と胸が熱くなってくる。

自分を表現すること、何かを生み出すこと、創作すること。そんなことの根源に触れるような部分もある。これは思った以上に深い漫画なのかもしれないぞ。読み終えて、なんだかすごく満足してしまったのであった。