ROCA 吉川ロカストーリーライブ

ROCA 吉川ロカストーリーライブ

160 いしいひさいち(笑)いしい商店

いしいひさいちは大学時代の「バイトくん」以来のファンである。当時は「バイトくん」シリーズを全冊持っていたし、ドーナッツブックスも相当数そろえていたっけ。この人の描く漫画は素晴らしい。

ところで、我が家が朝日新聞の購読をやめたいきさつは前に書いたが、そのせいで「ののちゃん」を読むことができなくなった。それだけは残念だ。と思っていたら出会ったのか、この「ROCA」である。

ラジオ番組「伊集院光 深夜の馬鹿力」の年末企画「今年のベストバイ」で紹介された本である。ROCAというポルトガルの歌曲ファドの歌い手を目指す女の子は「ののちゃん」にもごくたまに登場していたが、あまり人気も出なかった。でも、いしいひさいちはこの子を描きたかったのだ。彼はこの本を自費出版、ネット通販だけで売っている。これを本にして売ろうとする出版社がいなかったのか。自費出版だからこそ、のびのびと書いているのかもしれない。四コマ漫画の羅列なのに、とても深い。そして、もちろん、面白い、楽しい。

ROCAという子の境遇も、彼女をめぐる周囲の人たちも、それぞれに人物像が深くて、愛着がわく。好きになる。いい加減で乱暴でわがままでも、愛情が深い、そんな人たちだ。そうか、こんな物語をいしいひさいちは描きたかったのか。強くて暖かくて少しずっこけていて高みを目指すような、こんな物語だったのか。

教えてもらえてよかった。この本を知ることができて、良かったと思う。