YASUJI東京

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133 杉浦日向子 ちくま文庫

「不完全な司書」で紹介されていた。夫が図書館で借りたのを読ませてもらった。杉浦日向子は好きで漫画もエッセイもずいぶん読んでいたけれど、ブログを始める前だったので記録にあまり残っていない。惜しい人をなくしたものだ。

25歳で早世した明治時代の井上安治という画家と、その師匠の小林清親を描いた漫画。それに単行本未収録の作品が何篇か収められている。作品中、井上安治論を書いている女子学生が登場するが、これは日向子さんそのものだ、とあとがきで南伸坊が書いている。

杉浦日向子の描く江戸は粋でのどかで楽しくて、でも、どこか不気味さも含んでいる。不思議な絵を描く人だった。怪談も、怖いというよりはわくわくするような物語に仕上がっていた。心根が安定していると言えばいいのだろうか。動揺のない穏やかさにあふれた画情であった。

「武蔵野は月の入るべき山もなし草より出でて草にこそ入れ」という詠み人しらずの俳諧が引用されていた。杉浦氏はそれを「ビルより出でてビルにこそ入れ」と読み替えている。まさしく今の東京はそれだよなあ、と思う。何もない原野だったころの江戸という土地。ビルだらけの町で、杉浦氏はそれを見ていたのか。