42 陣内秀信 鹿島出版会
さて、これも夫の本である。正直言って前の本と似たようなことが書いてある。どっちかっていうと、こっちのほうがより研究書っぽい感じはあるが。この本も、作者が愛するヴェネツィアについて熱く語っている。
ヴェネツィアは、15世紀末にポルトガル人によるアフリカ新航路の発見によって大きな打撃を受けるまでは、東方交易の一大拠点であった。水路に面した建物は、イスラム建築の様式に色濃く影響を受けている。また、迷路のような都市のつくりも、極めてイスラム的である。とこの本の指摘を読んで、なるほど、と思い出した。以前旅したモロッコのタンジェという街もまた、迷路のように入り組んでいた。そして、アーチ形の柱の続く回廊や、中庭にある美しい水場など、確かにヴェネツィアとの共通点にあふれているのだ。あの時はイスラム建築の美しさに感動したものだったが、この本の指摘通り、ヴェネツィアもまた、似たような特徴に満ちているのだ。
というわけで、この本と、その前に読んだもう一冊で、ヴェネツィア理解が深まり、実際の旅がより楽しくなった、とつくづく思う。前回も書いたけれど、ヴェネツィアへ旅する人は、ぜひこの人の本を読んでから行かれますように。
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