じゃむパンの日

じゃむパンの日

58 赤染晶子 palmbooks

なんでこの本を手に取ったのかよくわからない。たぶん誰かが褒めていたからだと思う。だって、名前も知らない作家だったのだもの。

まるで学習ノートみたいな装丁の小ぶりの本。中には膝の力が抜けるようなエッセイ。悪い意味じゃないのよ。当たり前の日常のはずなのに、どこか間抜けだったり、どこか変だったり、そしてぷぷぷぷ・・と笑ってしまうような軽くて面白い文章。これはどこかで似たものを読んだ、そうだ、岸本佐知子のエッセイだぞ、と思っていたら、最後の方に岸本佐知子との交換日記が収録されていて、おおおお、やはり呼び合うのか、こういう才能は!と感動した。

エッセイの中で芥川賞を受賞した話が載っていて、そうなのか、この人、芥川賞作家だったのか、と驚いた。文学賞に興味をもたないと、時々こういうことが起きる。知らん作家だが、妙に面白いなあと思うと、実は大きな賞をずいぶん前に受賞した作家さんだったりして。知らぬは私ばかりなり、という現象。なので、それを知った段階で急いで図書館に受賞作をリクエストしてから続きを読んだ。

読み終えて、書籍情報をネット検索したら「2017年に早逝した著者によるエッセイ55 篇」とあって、愕然とする。亡くなっちゃってたの、この人。今ごろがっかりしてごめん。そういえば、エッセイの中に小児病棟の一日の様子みたいなテーマがいくつかあったけど、そうか、この人、病弱だったのか。生きてるうちに読めなくてごめんよー、と意味もなくうなだれてしまった。

受賞作、読むからね。待っててね。って、誰に言ってるんだ、私。