デンマーク・イタリア旅行記6(ヴェネツィア篇1)

デンマーク・イタリア旅行記6(ヴェネツィア篇1)

2024年6月7日

ミラノ中央駅から鉄道に乗る。例によって向き合いの指定席。我々の隣に座ったのは香港人の男性たち。親子らしい。若い方が「日本人?私、日本によく行きます。」なんて言うのでちょっと話したけど、彼ら、どちらも大きな一リットルサイズのペットボトルを抱えていて、中の赤い液体をぐびぐび飲んでいる。においから察するに、赤ワインだ。まさかファンタのグレープ味じゃあるまい。二時間ちょい乗っている間に二人ともその1リットルを飲み干しちゃったわ。別に暴れたわけじゃないけれど、酒臭くってうんざり。

さて、ついにヴェネツィア到着。夫が20年前に初めてギャモンで海外遠征した場所。当時はまだ下の子が幼稚園、上の子が中学生だったので私はいっしょに行けなかった。すごくいいところだったと何度も聞かされて、そんならいつか連れてってねと何度話したことか。やっと来たわー。



駅を出るといきなり大きな水路。ヴェネツィア本を読んでたからわかるわ、これがカナル・グランデ。船が行き交っている。それを横目に見ながら、ホテルまで歩く。小さな路地を曲がるとすぐのところ。まだチェックイン時間ではないが、荷物を預かってくれて、ランチにお勧めのレストランを紹介してくれる。

おすすめのレストランへ行く。外の席で椅子を背中にしていると、なんだか落っこちそうで席を変えてもらう。高所恐怖症なんだが、こういうとこも実はダメなんだな。でも、ランチはおいしかった。



ヴェネツィアの街の中は、車はもちろんのこと、自転車も走らない。ヴァポレットと呼ばれる水上バスや水上タクシー、モーターボートなどを使い、運河が車道の代わりの役目を果たしている。張り巡らされた運河にはたくさんの橋が架かっているが、船が通るため、どれも太鼓橋となっている。

つまり、登って下りることになる。だから、大きな橋はスロープのほかに階段もついている。車いすやベビーカーは苦労するし、ご老人も杖をついて橋をえっちらおっちら渡ってお疲れだ。

大きなスーツケースをもった旅行客もなかなかたいへん。しかも、運河沿いの道はほとんどがローマみたいな石畳なので、キャリーケースを引くのもガタガタする。前回来たときにそういう事情が分かったので、夫は駅のすぐ近くのホテルを選んでいて、これは大正解であった。というわけで、車が入れないのは不便な点もあることは確かだが、だとしても、私のように転びやすい人間には、車が通らないことは大きな安心だ。本当に楽。子どもが走り回っても、車にぶつけられる心配もない。そして、排ガスの匂いが全くしないのは、本当に清々しい。以前に竹富島に行ったとき、島内は島民以外は車禁止で、旅行客は歩くか自転車だけと決まっていた。あれも良かったなあ。SDGsを言うのなら、そういう街がもっとあってもいいような気がする。

ところで、長旅は洗濯物が問題になる。下着類は毎日入浴時に洗って室内で干していた。コペンハーゲンは乾燥していてすぐに乾いたけど、ローマとフィレンツェでは結構苦労した。いずれにせよ外着はなかなか洗えないので、ヴェネツィアではコインランドリーに行くことにしてあって、フロントで場所も教えてもらった。そこで、まずコインランドリーに下見に行く。おお、あった、あった。

どんなシステムになっているかを中に入って確認。どこに洗濯物を入れ、どこにいくらコインを入れて、洗剤はどうなる・・などなど二人で話し合っていたら、洗濯物の仕上がりを待っていたおばちゃんが察知して、イタリア語交じりにいろいろ説明してくれた。どこにも親切な人はいる。ありがとう。

チェックイン時間になったのでホテルに入り、洗濯物を抱えてコインランドリーに戻る。おばちゃんに教わった通りにあれこれやるのだが、いまひとつわからんと迷っていたら、今度はそこにいた若いお兄ちゃんが世話を焼いてくれる。みんなありがとねー。世界は親切にあふれてる、と旅に出るたびに思う私。

洗濯物が仕上がるまで、そこらを散歩する。ヴェネツィアは、観光名所じゃなくても街歩きそのものが楽しい。迷路のように入り組んだ狭い道、歴史ある建物、気持ちの良い水路、楽しいお店、そして咲き誇る藤の花。

洗濯が終わる頃にコインランドリーに戻り、今度は乾燥機に移動させる。さっきのお兄ちゃんがまたまた世話を焼いてくれて、本当にありがとう。乾燥が終わるまで、カナルグランデ沿いのカフェで夫はプロセッコ、私はレモネードを飲む。うーむ、映画の登場人物になった気分だわー。



ほかほかの洗濯物が出来上がる。よかった、これでしばらく困らない。ホテルで一休みして、夕食はホテルのすぐそばのレストランへ。グリルフィッシュを頼んだら、どう見てもいわゆる鰆の塩焼きが出てくる。大根おろしと醤油で、箸使って食べたーい!!でも、出されたのはオリーブオイルとバルサミコ酢とナイフとフォーク。そりゃおいしいけどさ。骨のきわの魚肉をどうやってこそげ取るのさー!などとぶつぶつ言いながら、その日の夕食は終わったのであった。

翌日は朝9:30にサンマルコ寺院に予約が入れてある。ヴァポレットと呼ばれる水上バスの72時間チケットを購入して乗り込む。ヴァポレットはヴェネツィア市民の足でもあるので、通勤客が先に乗り込み、観光客が乗れるのはその後。これ、正しいやり方だと思う。日本でも鎌倉などがオーバーツーリズムで困ってるらしいけど、江ノ電は通勤通学客が先に乗るってルールにしちゃったらどうだろう。さて、ヴァポレットはけっこう満員で、立ち乗りである。ヴェネツィア市を逆Sの字型に流れるカナル・グランデをほぼ端から端まで移動する。水路の両脇には美しい建物が立ち並び、到着したのは、これぞヴェネツィア!というサンマルコ広場である。

時間にはまだ早いので行列に並んで待つ。さすが観光地。観光客が朝からあふれていて、いろんな言語が飛び交っている。どこを見ても絵になる、写真になる。この建物は遠近法を利用して広く見えるように作られてるんだよ、などと夫の解説。

さて、時間なのでサンマルコ寺院に入場しよう。サンマルコ寺院の中は金ぴかぴか。中尊寺金色堂みたい。

贅の極みですな。床のモザイクも、壁の装飾も、あちこちにこれでもかと飾られた彫刻も、何もかにもが圧倒的で、過剰で、豪華絢爛。バルコニーから見る外の景色も絵ハガキか映画みたい。あんまりすごいんでお腹いっぱいになって、疲れちゃった。外に出て、サンマルコ広場にテーブルを並べているカフェでひとやすみ。「前に来たときに、ここでお茶したかったんだけど、一人じゃなんだかなあ、と思ってできなかったんだ。」と夫。しゃれたウエイターさんが何人もいて、気取った手つきでメニューを持ってくる。高い!!コーヒー一杯がランチ一食分くらいする。焦ったけれど、ここでお茶するのが夢だった夫と、覚悟を決めて(笑)コーヒーを飲む。あとから来た観光客が、メニューを見て慌てて立ち去ったのも目撃。うーん、我々、その勇気がなかったというわけだ。

悔しいのでうんと長居して、トイレもしっかり借りて、ようやく席を立つ。ぶらぶらと土産物屋などを眺めながら、美しい街を歩く。グッゲンハイム美術館に行ったら休館だった。残念。で、アカデミア美術館へ行く。古典派の絵画がたくさんあって、たまに飾ってあるピカソの絵が居心地悪そうに見える。マチスもあった。近代絵画にほっとしてしまう私は、古典がよくわからないのかなあ。

スタンディング形式の居酒屋で軽くランチ。なかなかおいしいし、楽しい。

それから、夜予約を入れてあるレストランの場所を確認する。メニューが貼ってあったので写真にとって、あとで作戦会議を開こう。というわけで、一度ホテルへ戻って休憩。

夜、ヴァポレットでレストランへ行く。地球の歩き方にお勧めされていた店を事前予約していたのだ。楽しみにしていたのだが、「ん?」となる。なんだか味がはっきりしない。アスパラガスのサラダはカスカスだし、付け合わせのういろうみたいな黄色い塊が、ねちねちして全然おいしくない。なんだ、これ?(のちにこれは「ポレンタ」であることが判明。ほかの店で食べたら、とてもおいしい料理だった。)どうにも消化不良で、早々に店を出た。観光客だから適当にあしらわれてしまったんだろうか。

残念な気持ちでヴァポレットに乗る。最前列の席が空いたので座ると、おお!夜のカナル・グランデの美しいことといったら!

街の灯が川面に映って幻想的に輝いている。ディズニーシーの100倍楽しいわ。いつまでも乗っていたかったけど、ホテル最寄りの駅についてしまったので泣く泣く降りる。レストランは遠くてしかもおいしくなかったけど、あそこまで行ったおかげでこの景色を堪能できた。それなら、それはそれで良かった、と結局、満足した夜であった。

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