13 坂田靖子 白泉社
その昔、LaLaという雑誌があった。と思ったら、今もあるのね、私が買わなくなっただけで。大好きな漫画雑誌であった。
LaLa の描き手の中でも好きなのが坂田靖子だった。英国紳士の日常を描いたバジル氏シリーズが一番好きだったが、わけのわからないファンタジーものというか、おばけとも妖精ともつかないへんてこな生物が登場するタイプの作品も好きだった。この本は古書店で見つけたのだが、まさにそのヘンテコタイプの漫画である。
「ライラ・ペンション」。両親が海外に転勤になる間、うるさいおばさんの監督下を逃れるために級友と下宿生活を始めるのずちゃん。ライラ・ペンションと名前だけは素敵だが、その実態はおんぼろ長屋の家は、実は変な生き物がいるみたいだったり、タケノコが異常発生したりする場所だった。そんな中でもドタバタの生活。登場人物ひとりひとりの個性が際立って面白い。
もう一作の「ノーベル・マンション」は前作よりもさらにはっきりと化け物が住むマンションが舞台である。おしりにしっぽをつけて歩くのが好きな主人公のマック。牛のぬいぐるみをかぶって生活しているらしき隣人や、冬になると胞子を出して島民に入る住人なんかがいて、あとで実はマックが人間だとわかって大変なことになったりもする。これまた、のんきで前任の登場人物たちが愛らしい。
それにしても古い漫画なんだな。「国鉄」とか「ベストテンつけて。トシちゃんが出るから」とか、そんな言葉が出てきて懐かしくなってしまう。漫画自体は古びてないのに。
坂田靖子、最近も描いているのだろうか。私も漫画読みの第一線からは離れてしまったからなあ。