服を10年買わないって決めてみました

服を10年買わないって決めてみました

48 どいかや 白泉社

副題は「買わずに楽しく絵本作家のシンプルライフ」である。どいかやは、「チリとチリリ」という絵本で知っていた。人気のある絵本作家である。この本も、彼女のかわいらしいイラストがあちこちにちりばめられていて、楽しい絵本になっている。だが、中身はとてもしっかりした思想に基づいている。

作者はある年末に「着きれないほど服を持っているのに、まだ服を買い続けている私」に気づく。服をしまうスペースもなくなってきているのに。そこで「そうだ、来年から10年間、服を買わないぞ」と思いつきで決めてしまう。靴下や下着、靴は買っていいし、人からもらったものはありがたく着るし、仕事などでどうしても必要なものは買う、という原則で。

「服はどんなふうにつくられているか」という章がその次に続く。六年ほど前、私も「大量廃棄社会」という本を読んでショックを受けたことがあるのだけど、それと同じようなことが書いてある。簡単に書くと以下の通り。

ファッション業界は、今や石油産業に次ぐ環境汚染産業である。発展途上国の労働者は劣悪な労働条件下で服を作らされ、原料の産地では大量の薬剤使用で労働者の健康を害し、広大な大地も汚染する。また、流行が移り変わるたびに、その服は簡単に捨てられ大量のごみとなり、廃棄によりさらに地球が汚染される。

というわけで、まずは持っている服を整理し、もう着ないようなきれいな服は寄付し、人にあげられない服は、無駄にした責任を実感するために燃やした。そして、残された服を最大限に生かしての10年が始まる。古臭くなった服は、ボタンを付け替えたり、裾を切って縫い直したり、手芸クラブに入って編み物をプラスしてイメージを変えたり。Tシャツと古いスカートを縫い合わせてアッパッパーにしたり、穴が開いているところは刺しゅうを施したり、色褪せたら染めてみたり。そんなこんなで36歳で始めた服を買わないチャレンジは、46歳でめでたく終了したという。終了記念にオーガニックコットンのTシャツを思い切って買ったら、ものすごくうれしかったそうだ。

私も、今のマンションに引っ越すときに、かなり大量の服を捨てた、つもりだった。でも、まだ結構あるなあ。そして、やっぱりたまに服を買う。たぶん普通の人よりはかなり少ないと思う。「大量廃棄社会」を読んでからは、どうも、うかうかとは服が買えなくなってしまったのだ。どいかやさんみたいに、きっぱりとはできないけれど、でも、無駄に思い付きだけで流行の服に飛びついて買うのはやめようと思っている。リフォームは…昔は、子供に服を縫っていたので、いろいろやったものだった。私の古くなった服を子供服に縫い直すなんてこともよくやっていた。でも、もうそれはできないなあ。そこまでのエネルギーはなくなってしまった。ボタンのつけ直しくらいならできるかもしれないけど。

ファッションが趣味で、とか、お洋服大好きで、という人は結構いるし、それがいけないとは思わない。ひとつの表現方法として、個人の愉しみとして、ファッションの重要性もよくわかる。でも、ぱっと買って、買ったことだけでもう満足して、ろくに着もしないで、翌年にはもう流行おくれだからと捨てちゃうみたいなやり方はさすがにどうかと思う。その服が、どんな材料で作られ、誰の手を経て、どのように自分の手に渡ったのか、そしてそれがどこへ行くのか。そんなことを、少しでもいいからみんなが考えたらいいのになあと思う。ファッション好きの人は、この本を読んで、どんなことを考えるのかなあ。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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