名探偵のままでいて

名探偵のままでいて

113 小西マサテル 宝島社

皆様、ご無沙汰です。長旅から無事に帰ってきました。今回は北欧17日間。おいおい、その報告も書いていこうかとは思いますが、とりあえず、旅先で読んだ本の話を。この本は、第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。夫からのおすすめでした。

シャーロック・ホームズのように現場で行動したりしない、情報を貰ってただその場で推理するだけの「安楽椅子探偵」という探偵の類型がある。一番笑ったのは、安楽椅子そのものが実は探偵という「安楽椅子探偵アーチー」(松尾由美)。で、この本は、認知症の老人が探偵である。いろいろ趣向を凝らすなあ、と感心する。

主人公の小学校教諭、楓の祖父は元校長で、幻覚と記憶障害が起きるレビー小体型認知症を患っている。その彼は、楓の身の回りの出来事を聞き、見事に謎を解く。そして、それらの出来事を経て、ついに楓と祖父自身にかかわる大きな事件が起きる。

すいすいと読めて、登場人物も好きになる、良いミステリ。ただ、ちょっと詰めが甘いかなあ。好きな女性と会うのに、わざわざ趣味が合いそうな友人男性を毎回同席させるって、ちょっと能天気すぎる気がする。そのせいでややこしくなるのにねえ。

短編を重ねながら、全体の流れが出来上がってく作りは、旅先で少しずつ読むにはとても向いていた。退屈な空港の待ち時間をしっかり支えてくれた一冊だった。