無人島、研究と冒険、半分半分。

無人島、研究と冒険、半分半分。

184 川上和人 東京書籍

「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」の川上和人さんの新作。この人、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所鳥獣生態研究室長という立派な肩書の人である。が、前作もそうだったようにこの本もユーモアにあふれていて、というより非常におちゃらけていて、まじめな人はどうやら最初怒ったりもするらしい。そのうち巻き込まれちゃうんだそうだが。とにかく、だとしても、研究に対してとても真摯であることは間違いない。

この本は、小笠原諸島の中の無人島である南硫黄島で行われた自然調査の話である。調査は1936年、1982年、2007年、2017年の四回しか行われていない。ここでは著者が参加した2007年と2017年の調査についてが書かれている。南硫黄島は地形が厳しく、山頂を含む調査は非情に困難であり、次の調査はまた十年後になると言われている。様々な分野の学者や登山家、カメラマンなどが集結し、それぞれの専門分野から新たな知見が得られている。それは、自然災害や崩落や落石による危険を乗り越えての冒険でもある。

みんな専門分野の第一人者であり、ということは、みんな自分の研究のためにわがまま言い放題な人たちであり、でも彼らが集まって力を合わせるからこそ、素晴らしい結果が得られるわけであり。そして、この調査探検の話をどこかで書籍化したい、本にしたいと皆が願いながら、それぞれの調査結果の研究が忙しすぎて、それどころじゃなくて後回しになっていた。ところが南硫黄島に関する講演会が行われた後で一人の少女が「この島の本があったら読みたいです」と言った。ごめん、ない!というわけで、ついにこの本が書かれたという。ナイスだったね、その少女。

無人島の調査は、人間の影響がない状態の自然の姿を観察できるという意味で非常に有益である。また、蕎麦に人間の生活する、非常によく似た自然状況の島があるおかげで比較対象も可能である。毎回、新たな発見があり、驚きがある。次回の調査も楽しみである。

この本を読んで、すっかり小笠原諸島に行きたくなった。急いでいかないと間に合わなそうだ、屋久島みたいにね。何しろ船は週に一便、丸一日かけてじゃないと行けない場所だから。何とか計画立てなくっちゃ。