まずはこれ食べて

まずはこれ食べて

114 原田ひ香 双葉文庫

学生時代の友人たちで起業した医療系のベンチャー企業。多忙な中、社内が荒れていくのを解決するため、水回りの掃除と夕食、夜食作りのため、家政婦が雇われる。彼女の作るご飯はとてもおいしそうだ。そして、それらを食べながら交わす社員たちの会話。一編ごとに主人公が入れ代わりながら、それぞれの人物の日々が描かれる。ほのぼのするじゃないの、と思っていたら、ストーリーはいきなり、ぐいんと曲がる。そう来るんかい!!とちょっと驚く展開。

原田ひ香と言えば「古本食堂」以来。一筋縄ではいかない人だとは思っていたけれど、この本もそうだった。思いがけない方向へ、突然走り出す。そうか、そうきたか・・・と唸ってしまった。まあ、いるよなあ、こういう人って。という感想が残る。

心を込めて料理を作る。それが意味することを、改めてかみしめる。人の価値って、そんなに簡単に決められるものじゃない。すごい仕事を成して、大金を稼ぐだけが価値ではない。人の心を温め、ほっとさせる。それが、どれだけ大事なことか。

食は、旅の大きなテーマのひとつでもある。おいしいものを食べることが、旅をどんなに豊かにするか。そんなことを考えながら、旅の中でこの本を読んだ。