青い壺

青い壺

37 有吉佐和子 文春文庫

昭和51年から52年にかけて「文藝春秋」に連載された小説。一度絶版になっていたが、2011年に復刊され、原田ひ香絶賛の帯がきっかけで、最近、再ブレイクしたらしい。

無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壺が、売られ、盗まれ、人から人の手に渡って行って十数年後に作成者に再会する物語。人の老いや欲、空虚な誇りなどがそれぞれの物語の中に描かれている。時代背景は古いのだが、書かれている人間像は多岐にわたり、生き生きとして現在でも十分に通じる。舞台はスペインにまで飛び、ちょうどヨーロッパ旅行中だったので、何とも臨場感があって楽しかった。

有吉佐和子はすごい。時代をものすごく先取りしていた人だと改めて思う。帰りの飛行機内で映画「カラーパープル」を見て彼女の作品「非色」を思い出していた。