パラ・スター

パラ・スター

2021年7月24日

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「パラ・スター〈Side百花〉」阿部暁子 集英社文庫

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「パラ・スター〈Side宝良〉」阿部暁子 集英社文庫

 

車椅子メーカーに勤める百花と、車いすテニス選手の宝良。いじめられっこだった百花の憧れのヒロインだった宝良が交通事故で脊髄を損傷したとき、車いすテニスの道を示し、生きる目的を与えたのは百花だった。親友の手足のように動く車椅子を作りたい百花と、下半身不随でも自分らしく生きるため努力し続ける宝良の物語。時系列をややずらして、それぞれの視点から描かれている。
 
・・・と解説しちゃうと、すごーく陳腐だなあ、と思う。そもそも私はスポ根ものが嫌いである。勝利のために身を削ってトレーニングするなんて話、メンドクサ・・・としか思わない。が、この物語は、素直に感動しちゃったのだ。それというのも、ストイックな根性物であるだけはなく、もっと一人ひとりの心のありように根ざした、リアリティのある挫折や苦しみがきれいごとでなく描かれていたからだと思う。
 
クールビューティーの宝良が朝のルーティンとして導尿のカテーテルを使用するシーンがなんのためらいもなく当たり前に描かれているあたりから、そのリアリティにやられた。母親との関係性も、全くきれいごとではなく、けれど、真摯に丁寧に描かれている。
 
2020年のパラリンピックを見据えて書かれた小説だけれど、実際には延期されちゃったんだよね。オリンピックにはなんの興味もない私だが、パラリンピックは、もし実施されたらちゃんと見てみようかな、と改めて思った。

2020/12/21