忍びの滋賀 いつも京都の日陰で

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2023年4月6日

59 姫野カオルコ 小学館新書

信頼の姫野カオルコのエッセイ集。というか、滋賀県応援の一冊。文体としては、「ケーキ嫌い」に近い。つまり、世の中へある種の異議申し立てをするときの姿勢と口調である。

姫野カオルコは、滋賀県出身である。ところが、「シガ」というと、関東の人は長野と勘違いする。つまり、「志賀高原」を思い出すらしい。あるいは多少発音が悪かったり、聞き手の耳に難があると「千葉」や「佐賀」と間違えられることもある。これなら間違わないだろう、と考えて「琵琶湖のある県です」というと「ああ、京都ね」とか「京都の郊外なのね」などと言われてしまう。実際、主な旅行会社の関西旅行のパンフレットを見たら「京都・奈良・琵琶湖」と表紙に印刷されていて、絶対に「京都・奈良・滋賀」とはなっていない。(現実に皆さん、旅行代理店で探してみてください。必ずそうなってるから。)

姫野さんは名著「京都ぎらい」を引用される。そう、京都出身と言っていいのは、京都の洛中出身だけ、という本。京都市内であっても山科はもとより、西陣出身であってさえも田舎もん扱いされるという、例の京都人意識の名著である。そして、あの、みうらじゅん氏が、京都の大将軍西町出身でありながら

【みうらじゅん】1958年生まれ。イラストレーターなど

という実にシンプルなプロフィールしか出さない、そのすごさを取り上げている。横浜出身の作家の100%がプロフィールの「神奈川県出身」を「横浜出身」に変えさせる中、なんと清々しい、というわけだ。憎いね、みうら!だってさ。

確かに、滋賀は京都の影で虐げられている。「そうだ、京都行こう」のキャンペーンで比叡山延暦寺がポスターに使われていたが、皆さん、知ってる?比叡山延暦寺は、滋賀県にあるんですよ。それで、さぞかし延暦寺さんは怒ったはるやろうといってみたら「当山がJRのポスターに起用されました」とうれし気に掲示されていた、というから、なんか悲しい。

そうだよね。関東でも「日光には行ったことがあるけど、栃木県には行ったことがない」という発言を聞いたことがある。そんなもんだよねー。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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