神田松之丞 講談入門

神田松之丞 講談入門

2021年7月24日

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「神田松之丞 講談入門」神田松之丞 河出書房新社

神田松之丞を初めて見たのは「ENGEIグランドスラム」。その時のネタが何だったのか覚えていないのは、たぶん知ってる話だったからだと思う。コンパクトにまとめてあるな、と思う程度で、ちょっと短い感じがしていた。その後、「伊集院光とらじおと」にゲスト出演して、その時の伊集院との対話が面白すぎて、そこで俄然、興味を持った。だってさ、ゲストのくせに、最初から最後まで、松之丞のほうが伊集院を質問攻めにして、どっちがゲストかわからない状態に持っていったんだもの。あれは、すごかった。で、そこから「問わず語りの松之丞」というラジオ番組をチェックするようになった。講談師だからね、話芸は素晴らしい。声がいい。しかも、松之丞、結構めんどくさいというか、性格悪いぜと気がついて、であるからこそ一層興味をもった。めんどくさい男、好きなのよ。

というわけで、神田松之丞の本である。面白かったよ。講談の何たるかが基本から説明されていて、それから、松之丞の持ちネタ全部のあらすじと解説が載っている。これ読んでから講談を聞きに行くと非常にわかりやすいよね。講談って面白いのよ。テレビもラジオもなく、まだ庶民が無筆だった頃、かわら版も読めないような人たちに向けて、こんな事件があったとか、こんな騒動があったとか、面白おかしく語って聞かせたのが始まりだからね。聞いてて飽きない、どんどん引きずり込まれるような作りになっている。落語がフィクションなら、講談は、基本、ノンフィクションだからね。私向きかも。

さて、そこで気がついた。わたしが子どもだったころ、早坂暁脚本の「天下御免」「天下堂々」という歴史ドラマがNHKで放映されていて、これがめっぽう面白かったのだけど、これって、元ネタが講談だったのだよね。「天保六花撰」や「天保水滸伝」が下敷きになっている。それから、これまたNHKで「男は度胸」という歴史ドラマをやっていて、これに出ていたのが、志垣太郎演じる天一坊。これも、講談に登場するネタだよね。つまり、私は子供時代、講談ネタに浸りきって、それを楽しんでいたのだなあ、と気がついた。講談は基本、史実が元になっているから、歴史好きの私がハマるのは当然の訳で、ああ、松之丞の講談を聞きに行きたい、と思ってしまう。

「今、最もチケットが取りにくい講談師」と言われている神田松之丞。とはいえ、この間、ラジオで、まだ三越劇場のチケットが全然売れない、とかぼやいていたけどなあ・・・あの後売れちゃったんだったっけか。ああ、こういうとき、地方都市に引っ込んでしまったことが恨めしい。東京にいたら、ぱぱっと走っていけるものを。まあ、仕方がない。機会を待とう。

2018/10/9