お家賃ですけど

2021年7月24日

134

「お家賃ですけど」能町みね子 東京書籍

「私以外みんな不潔」のコメント欄でミカンさんに教えていただいた本。ミカンさん、ありがとうございました。

ちょっとした手術のため、二泊三日の入院をした。手術自体は、15分から30分程度で終わる簡単なものである。日帰りでもいいくらいなんだが、なぜか二泊しろという。一日目は、入院してすぐに昼食を取り、簡単な説明を受けて、後は目薬を一回挿して終わりである。しかも、手術は翌日の午後三時以降。なら、明日の昼から来てもいいじゃん!!と拗ねる私である。長い長い暇な時間を、ひたすら読書に励む。カバンに最初二冊入れ、待てよ、ともう一冊入れ、念の為、ともう一冊入れた。結局、全部読み終えて、足りなくて新聞と雑誌まで売店で買ってしまった。

この本は、一番薄い、お手軽本。最初にさっさと読み切っちゃった。いい本だった。矢部太郎の「大家さんと僕」をちょっと思い出した。でも、あれほどには大家さんと交流はない。

能町みね子の文体は独特だ。自分を遠くから俯瞰しているというか、よそ事みたいに捉えているところがある。実際にそう感じていることが文章にも表れている。深刻なことも、苦しいことも、ちょっと離れて見ていると、なんとなく受け入れられたりもする。また、彼女自身の事情が、自分の姿を、借り物として捉えざるを得なかったということにも起因するのかもしれない。

最初、男性として住んだ小さなアパートに、女性になって、もう一度舞い戻る。そのアパート周辺の話を日記風に書き綴ってある。彼女が牛込に住んでいたのは平成の中頃。私は、それよりも更に前に、あの辺りを学生時代にたまにうろついていた。ギンレイホールとかね、何度行ったことか。神楽坂は、もっとひなびた下町だった。今はおしゃれになっちゃったけどね。懐かしい気持ちで、読み終えた。

2019/2/14